ハイレゾ収録したレコードは、1962年録音 トゥリオ・セラフィンが指揮したヴェルディのオペラ-TROVATOREです。 ドイツ・グラモフォンによるミラノ・スカラ座シリーズの一つで、名盤と言われるものです。
このレコードをハイレゾで収録した時、side1(1面)の中央部付近で音のカスレや音割れに遭遇しました。 音割れの要因は多々ありますが、レコード中央部での音割れは、内周歪とは考え難く、スタイラス(カートリッジの針)の汚れをクリーニングしたところ改善されました。
今回はヴェルディのTROVATOREレコードをハイレゾで収録した時に遭遇した時の音割れと、収録結果について紹介します。
TROVATORE・全曲を聴く
この音源は、レコードをFLAC(96khz 24bit)で収録し、FFmeg libfdk AACエンコーダでAAC(160kbps)に変換しました。 FFmeg libfdk AACエンコーダは、ここをクリック。
TROVATOREのレコードについて
このレコードは、3枚組で構成されており、side1〜side6は、以下のシーン(歌手)が収められています。 レコードの盤面中央部に貼付されたレコードレーベルを見ると、「原盤権」を示す「ⓟ1963 Polydor International GmbH」の表記がありました。(今より61年前に最初のレコードが発行されたことが分かります。)
音割れ状況とスタイラス(針)のクリーニング
side1(1面)のハイレゾ収録後、試聴したところ特に1幕 のレオノーラ役のステッラ(ソプラノ)が歌う「静かな夜」の一節で音のカスレや音割れが発生していることに気づきました。
音割れがレコードの中間部分で発生しているので、内周歪とは考え難く、スタイラスに微物が付着しているのでは無いか?と当たりをつけて、下の『(針)のクリーニング方法』から「粘着式」と「乾式」の併用でDL103Rカートリッジのスタイラス(針)クリーニング(下の画像)を行ってside1(1面)を再度収録してみたところ、以下の様に改善が見られました。
下のクリーニング前後のサウンドを聴いてみてください。
♬ クリーニング前後のサウンド
針先クリーニング - 後
針先クリーニング - 前
DENON DL103Rのスタイラス画像
「粘着式」と「乾式」の併用でスタイラス(針)クリーニング 後
ハイレゾ収録の実際
point
1 ハイレゾ収録に当たって
以下の内容で収録しました。
- 使用カートリッジ:DENON DL-103R 針圧:2.5gr
- 使用A/D変換:フルテック-GT40α
- 収録アプリ:VinylstudioでFLACフォーマット 96khz 24bit で収録
point
2 Vinylstudio:Cleanup処理
収録後、Vinylstudioの「Cleanup」タグを開いて、以下の処理を行いました。
- 低域ノイズ抑制処理:Rumble フィルターを「ON」
- 音量の最適化処理:Normalizeを「 -3db」で設定
- クリック抑制処理を実行。 クリック処理数の結果は、以下の通りで、盤面の汚れ具合は普通レベルと思われます。
クリック抑制状況(default設定のまま) | |||
レコード面:side | クリック処理数 | レコード面:side | クリック処理数 |
side1 | 2744 | side4 | 1058 |
side2 | 1655 | side5 | 1862 |
side3 | 1358 | side6 | 2468 |
Cleanup処理は、「Vinylstudio録音手順」を参照してください。
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ハイレゾ収録の試聴結果(内周歪の問題)
FLAC 96khz 24bitフォーマットで収録したハイレゾ音源を何時もの様に「我が家のB級オーディオ」(HAP-Z1ES)で試聴しました。 弦のストリングスは自然で心地よく、第2幕 アズチェーナ(メゾソプラノ):フィオレンツァ・コッソットが歌う「炎は燃えて」は、その美声に甚く感動しました。
しかし、「我が家のB級オーディオ」では気にならなかったが、ハイレゾ音源をAAC変換(160kbps)した音源をiPhone SE2の付属しているイヤフォンで聴くと、レコードの内周付近になると声楽部分で、内周歪の特有のビリ付き音が気になりました。
特にこのTROVATOREは、レコード内周付近で多重の声楽がフォルテで歌われるレコード構成になっています。 このため、内周付近で複雑なサウンド成分が混在し内周歪の影響を受けやすくなるのもその一因かもしれません。 また、イヤフォンでビリ付きが気になるのは、ノイズが含まれた音が直接鼓膜に到達するので、スピーカで聴くよりも違和感が強く認識されるためと考えられます。
内周歪とは、「レコードの内周に向かって、線速度が低下しますので徐々に高域再生レベル(情報量)が低下し、更にレコードのカッティングマシンとスタイラスの位置ズレがあるとトラッキングエラーが生じてレコード外周よりも歪が増大する」というものです。
内周歪は、エジソンが指摘した様にレコード最大のウイークポイントで、最高級プレーヤであっても、線速度の低下による情報量(音質)低下は防げませんが、トーンアームを長くする等でトラッキングエラーを改善することは可能とは思います。
ビリ付き改善ため、収録に使用しているカートリッジがトラキングエラーを生じているかもしれないと思い下のトラッキングゲージで再調整したものの「我が家のB級オーディオ」のプレーヤがプアーであることもあり残念ながら改善には至りませんでした。
ゲージ(調整ルーラ)の使い方
- レコードプレーヤーのターンテーブルシャフトに調整ルーラーを置きます。
- ゲージとアームを動かして、スタイラスをポイントAにドロップします。 頭の角度を調整して、スケールの前縁と水平線が水平に保たれるようにします。これにより、鏡の反射が助長されます。
- ゲージとアームを動かして、ポイントBでスタイラスをドロップします。
- 2点で正方形が形成されるまで、手順2と3を繰り返します。ネジを緩めてカートリッジを動かし、締め付けた後、カートリッジ固定ネジを締めます。
<<ゲージ使用法:原文まま表記>>
一方、参考で添付したYouTubeの楽曲をiPhoneのイヤフォンで聴くと、CD音源から収録したものか?当然ながらこのビリ付きは感じられません。 YouTubeの詳細情報を確認すると音声コーディックがOpus (251)でした。 ネット検索してみると、ビットレートは128kbpsの様ですがOpusによる音質は期待できそうです。
以前にOpusの音質を確認した弊記事では、低ビットレート(36kbps〜)でも、再生できる上限周波数は20khzをキープすることを確認しており、Chromeブラウザで再生した時の音声スペクトルをWaveSpectraで確認するとやはりカットオフは20khzでした。 次回のブログで、YouTubeの音声ファイルを抽出する方法をトライし、このYouTubeの音声ファイルのビットレート等を紹介出来たらと思います。 →「ビットレートの調査結果」は、ここをクリック
YouTubeの再生スペクトル(Cut-Off=20khz)
参考・YouTubeで聴く「ヴェルディのTROVATORE」全曲
ネット検索で今回収録したレコードと同じ音源と思われれる「トロヴァトーレ全曲」が字幕・対訳付きでYouTubeで公開されていましたので参考としてお聴きください。 また、オペラ対訳プロジェクトの方々のご努力に敬意を表したいと思います。
公開先:オペラ対訳プロジェクト
https://w.atwiki.jp/oper/