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CDと比較してアナログレコードの音質が好ましいのは何故?(考察編)

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画像:レコード写真

この記事は、「アナログ・レコードのここがダメ」の2ページ目で述べていた記事の内容を見直し独立ページとしてリニューアルしました。(2024/2/15)

レコードの音質が好ましく聴こえるのは何故なのか?ネットで調べても腑に落ちる合理的な説明が見当たりません。 当記事はCDに比べてレコードのダメな点が多々あるにも係わらず、CDと比較してレコードの音質が好ましく聴こえる要因を考察してみました。

アナログ・レコードのここがダメ」の記事で述べている、CDより劣っている点は以下の通り。

アナログ・レコードがCDより劣っている点

  • 低域共振(カートリッジとトーンアーム)が発生する
  •  左右CHのクローストークはゼロにできない
  •  スクラッチ(プチ)ノイズが発生
  •  ターンテーブルの回転数偏差の問題
  •  イコライザー特性(RIAA)のミスマッチ
  •  レコードの内周にまつわる音質低下
  •  アナログレコードの歪率

 

CD音質の弱点

アナログ・レコードに比べ、CD音質の弱点は何か? について、「CD音質のここがダメ」の抜粋で述べてみます。

大きく言って、アナログ・レコードに比べ「CD音質の弱点」は2つに集約されると言えます。

  1. サンプリング定理から、再生できる上限周波数が22.05khzで制限される。
  2. ビット深度が16bitで量子化ノイズが存在する。

 

弱点
1
再生できる上限周波数が22.05khzで制限される

CDはサンプリング周波数が44.1khzが故にサンプリング定理から、CDの再生帯域が22.05khz以上でハイカットします。 巷では、アナログと比較して、この22.05khz以上でハイカットする点を捉えてトリングスの倍音成分が再生出来ない等でダメ出しされることが多いのですが、例えばストリングスのスペクトルを見ると周波数が高くなるに従い音圧が低減する(1/f特性)なので22.05khz付近では耳や身体で知覚できる様な音圧成分は殆ど無いことが分かります。 

私見ながら、エイリアシングフィルターが完璧であればサンプリング周波数が44.1khzだからと言ってCDがダメだとは思われません。

 

弱点
2
ビット深度が16bitで量子化ノイズが存在する

CD音質のダメなところは、サンプリング周波数の問題よりもビット深度が16bitであることに問題がある様に思われます。

前述した様に、リアル音源(特にクラシックのストリングス)では周波数が高くなるに従い音圧が低減する(1/f特性)ですので、音のレベルが低くなればなる程測定できるビット数が少なくなり(-60dbFSで6bit -90dbFSで2bit)、量子化ノイズ(歪)が本質的に増大します。 また、量子化ノイズの波形は階段状で奇数次高調波成分が多く、このノイズは、人に不快感を与える鋭く粗い音になるのも気になる点です。 一方のアナログでは当然「量子化ノイズ」は皆無です。 

量子化ノイズを表す指標としては、ハーモニックス(THD)と量子化ノイズ(N)を加えた歪率(THD+N)で表すことができます。

CDフォーマット(16bit)での音のレベルの低下と歪率(THD+N)の関係を測定してみたのが下のグラフになります。(上のオレンジラインがCD・16bitを示し、下のブルーラインがハイレゾ・24bitを示します) グラフからCD・16bitでは、-60db以下になると歪率が1%以上になってしまいます。(一方ハイレゾ・24bitでは、0.01%) 

つまり、弱音になればなるほど量子化ノイズが増えて歪率が悪化することを示しています。 

画像:CDとハイレゾの歪率特性

弊記事 「CD音質のここがダメ」のデータを引用すると、「実際のベートーベン交響曲 第8番 第2楽章の一部のスペクトルから2khz付近で-40dbですので歪率は0.2% 5khz付近で-60dbなので歪率は1.5% 10khz付近で-80dbなので歪率は10%以上になる筈です。」ということから、この周波数成分は量子化ノイズとして人間の耳に知覚できる可能性があります。 このため、CDでは量子化ノイズ をボヤかすため故意にノイズを重畳させるディザリング手法で聴感対策しています。(ディザリングについては、ここをクリック)

CD音質の弱点(マトメ)

CDのダメなところは、前述の様にレコードと比較してビット深度16bitであるが故の高域部分に弱点があります。 人間の聴感は、中高域(1khz~10khz)部分で感度が高くなりますので、高域部分でCDの量子化ノイズが悪化することで違和感を感じるのかも知れません。

ただ、この違和感ですが、例えばレコードをハイレゾ録音した後、CD化して聴くと違和感は殆ど感じないませんし、レコード音質とほぼ同等の違和感の無いCDも存在しているのも事実です。

つまり、レコードをCD化して聴くと音質の差が殆ど感じられないと言うことは、CDのビット深度が16bit だからと言ってレコードの方が音質が良いと断定するには無理がある様に思えます。 何か別の要因もあると言わざるを得ません。

 

CDには2つの弱点があるからと言ってレコード音質が好ましいとは言い切れない。

上で述べた様に、CD音質には弱点があるものの、だからと言って「レコードをCD化して聴くと音質の差が殆ど感じられない」と言う点からCDよりもレコードが好ましく聴こえるとは言い切れません。 

ここからは、音質の本質から遺脱するかも知れませんが、更に掘り下げて「CDと比較してアナログレコードの音質が好ましいのは何故?」の考察を行ってみたいと思います。

 

アナログレコードの音質が好ましいのは何故?

ここからは、根拠がない推論ですが、アナログレコードがCDより好ましく聴こえるのは、レコードのダメな点によって再生音が歪んだとしても、倍音成分の連続性を持ち、好ましい音質に変質するのでは無いか?

例えば、ヴェルディのLA TRAVATA(椿姫)のLPレコードをMCカートリッジ(DENON DL-103R)で再生し、ハイレゾ収録(fs=96khz)した「乾杯の歌」のスペクトル動画を見てください。 この動画で分かることは、冒頭部分のストリングスに着目すると30khz以上の周波数成分が存在しているのが分かります。 

一般論としては、レコードの再生できる上限周波数は15khz程度と言われており、多く見積もっても20khz程度と考えられます。 更にこのレコードは、1963年(61年前)にプレスされたもので、当時の録音機材の実力から考えて30khz以上の再生には無理がある様に思われます。 しかし、このスペクトルが30khz以上の周波数成分が存在しているということは、DL-103R特有のハーモニックス成分が加わっているためでは無いか? であるなら、可聴帯域内にも倍音が内在しアナログ特有の好ましい音質に変質する査証を示しているのかも知れません。

 

カートリッジのハーモニックスが加わって再生帯域が広がる?という推論の正しさを調べるには、CDをレコード化して、このレコードを再生して、22.05khz以上の成分が確認できれば、正否を判断できる筈ですがその術がありませんでした。 しかし、次で説明する音展2022で「Lacquer Master Sound」を試聴する機会を得て、一歩踏み込んだ考察を行うことが出来ました。

 

好ましく聴こえる考察 Lacquer Master Soundとの出会い

「Lacquer Master Sound」について
32bit 96khzのハイレゾマスターから、生のラッカー盤にダイレクトカッティングを行い Ortofon SPUカートリッジを用いたハイエンドプレーヤでラッカー盤をアナログ再生した後デジタイズ(24bit 96khz)配信を行うというシステムです。(OTOTEN(音展)2022のブログ記事はここをクリック)

「Lacquer Master Sound」youtube動画

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Lacquer Master Soundを試聴して(感想)

音展2022・試聴会は、32bit 96khzのハイレゾマスター音源」の音源からラッカー盤を作成しラッカー盤のアナログ再生をデジタイズした音源」を聴き比べるので、理想的な条件下でデジタルとアナログレコードの音質の違いが判る筈です。

聴き比べた結果、ラッカー盤のアナログ再生をデジタイズした音源」の高域が好ましく、更にカートリッジのクロストークがあるにも関わらず音の広がりも感じられるものでした。

つまり、ラッカー盤(アナログレコード)を再生することで、音質が(好ましい方向に)変質すると言うことに他ならないと思われます。

何故、アナログ(デジタイズ)音源の高域が聴きやすく音の広がりを感じるかについて、「アナログレコードのここがダメ」のデータから見た以下考察(推論)です。

  1. 高域の聴きやすさ:テストレコード(AD-1)の1khz正弦波をDL-103Rで再生すると、6khzまで整数倍のハーモニクスが観測されました。 このハーモニクスは、カートリッジ(DL103)特有の歪でカートリッジの音色を与えるものと考えられ、これが高域が聴きやすくなる要因ではないか?
  2. 音の広がり:「アナログレコードのここがダメ」の「3)クロストークの位相について」で述べた様に、カートリッジのクロストークに逆相成分が含まれているために「音の広がりが感じられる」のではないか?

 

Lacquer Master Sound のサンプル音源でスペクトル比較を行ってみました。

サンプル音源は、「Lacquer Master Sound」サイトに掲載されている「CD音源」とCD音源より作成した「Lacquer Master Sound」のサンプル音源をダウンロードさせて頂きました。 スペクトルで比較した音源(Flac 96khz 24bit ファイル)はCharade (from CD)と Charade (Lacquer Master Sound)です。

「Lacquer Master Sound」の公式サイト
URL:https://www.cutting.mixerslab.co.jp/lms

Charade (from CD)

画像:シャレードのCDスペクトル

Charade (Lacquer Master Sound)

画像:シャレードのCDからラッカー盤を再生したスペクトル

赤枠部分:22.05khz以上に高域成分の存在が確認された。

point
1
各々のスペクトルから分かること

「Charade (from CD)」のスペクトルは、22.05khzでハイカットされ、この音源をカッティングしたラッカー盤で再生してデジタイズされた「Charade (Lacquer Master Sound)」のスペクトルは、本来ハイカットされる筈の22.05khz以上に赤枠で示す高域成分が加味されているのが分かります。 
これは、Lacquer Master Soundのアナログ再生で使用されているカートリッジ(SPU Classic GE MK Ⅱ)のハーモニックス成分が加わって高域が拡張されているためと思われます。

 

point
2
サンプル音源を試聴して

ストリングスの音をフォーカスして試聴したところ、「CD音源・Charade (from CD)」の方は硬質で耳に付く音でしたが、「Charade (Lacquer Master Sound)」では、弦の音が伸びやかになり、好ましい音に変質している様に感じました。
これは、上のスペクトルで示されれたカートリッジ(SPU Classic GE MK Ⅱ)のハーモニックスやクロストーク成分が可聴帯域にも加わってアナログ特有の好ましい音質に変質する査証ではないか?と推察されます。

それにしても、Lacquer Master Sound は大変ユニークで興味のあるサウンドだと感じます。 現在のタイトルは少なくクラシックのジャンルが無いのは残念と思っています。 過去や現在の名演奏と言われる音源を Lacquer Master Sound で聴けたらと願っています。
現在リリースされているLacquer Master Sound の中森明菜のアルバムは、アマゾンから購入できますここをクリックしてご参照ください。

 

考察のマトメ

「CDと比較してアナログレコードの音質が好ましいのは何故?」の考察要点を下記にマトメました。 アナログレコードとCD音質との差は、下の1️⃣ と 2️⃣ が加味されることで生じるのでは無いかと思われました。

  1. CD音質は16ビットであるが故に量子化ノイズの影響があり得ること。(アナログ・レコードの量子化ノイズは皆無)
  2. アナログ・レコードは、特有の欠点を多々有するが、特にカートリッジのハーモニックスやクロストーク等によって聴感上 好ましい音質に変質すると思われること。

 

最後に、アナログレコードは、CDに対して多くの欠点を持っていますが、この欠点が好ましい音質に変質し再生装置毎に特有の個性を持つ(楽器の様な)音質になり、CD(デジタル)音質とは一線を画すものになると思われます。 更に付け加えるとLacquer Master Sound で使用されいるハイエンド・ビンテージ級のカートリッジなどで再生すればより好ましい音質に変容することは想像に難くありません。

 

以上、長々と「CDと比較してアナログレコードの音質が好ましいのは何故?」についての考察を行いました。 何故レコード音質が好ましいかの疑問について一つの参考になれば幸いです。

 

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