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iPhoneの内蔵マイクでハイレゾ録音は可能か?その実力は?

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オーディオ-レコーダ app

ステレオマイク app

iPhoneはボイスメモという純正アプリが付属していますが、ステレオには非対応(モノラール)で録音ファイルも非可逆圧縮のAACフォーマット の48khz 64kbpsですので、残念ながらハイレゾには程遠いものです。(Appleの公式サポートによれば「iPhone対応の外部ステレオマイクを使えばステレオで録音できる。」とのことです。)

そこで、iPhoneの内蔵マイクを使ったステレオで、ハイレゾ音質に近づく収録アプリが無いか探した中でサードパーティの「オーディオ・レコーダapp」「ステレオマイクapp」(400円)という二つのアプリに着目しました。

それぞれのアプリは、最大サンプレートが192khz (ステレオマイクappは48kHzまで)、ビット深度が最大32bitまでのwaveフォーマットで収録できますので、フォーマット的にはハイレゾの定義を満足しています。(AACでの収録も可能です。)

以上から、iPhoneの内蔵マイクでステレオ・ハイレゾ収録出来るものなのか?また出来なくても、その音質の実力がどの程度か興味のあるところです。 今回はiPhone se2を使って、それぞれのアプリを簡単なテストで音質の評価を行ってみました。 また、実際のピアノの音も収録してみました。

なお、この簡単テストは、iPhoneの内部仕様が分からず外側から見たテスト結果です。 このため、推定での評価結果になりますことを予めお断りします。

 

先ず、iPhoneの内蔵マイクで収録したピアノの音を聴いてみてください。

収録例

収録条件等

  • 収録場所:防音室内のKAWAIグランドピアノ
  • 収録 iPhone: iPhone SE2(内蔵マイク)
  • 収録アプリ:ステレオマイクapp
  • 収録フォーマット:wav 48khz 32bit
  • 編集アプリ:Audacity
    -3dbノーマライズ Mediam_Hall Reverb
  • AAC変換アプリ:XLD 48khz 256kbps

 

オペレータ
オペレータ
ここから、「オーディオ・レコーダapp」と「ステレオマイクapp」のレビューになります。

 

アプリの収録フォーマットについて(SPEC比較)

オーディオ・レコーダapp ステレオマイクapp
wav
フォーマット

サンプルレート(fs) 8khz〜192khz(8段階) 44.1khz,48khz
ビット深度 16bit,24bit,32bit(3段階) 16bit,32bit
AAC
フォーマット

サンプルレート(fs) 44.1khz,48khz 44.1khz,48khz
ビットレート 64kbps〜320kbps(5段階) 192kbps
44.1khz-96kbps
32khz-64kbps

注記:ハイレゾの定義に関連する数値を赤字で示す。

 

ステレオ収録マイクについて

iPhone se2内蔵マイクは、「上部」「下部」「背面」と3つのマイクがありますが、ステレオ収録の場合どのマイクが左右に割り当てられているか?知る必要があります。「ステレオマイクapp」ではマイクの方向について、設定画面中に下のように説明されています。

マイクの方向
この設定は、ステレオ録音がサポートされたデバイスのみで有効です。 自動:マイクの方向は、画面の向きと同じです。 画面の方向が横向きのときに、よりステレオ感があります。画面回転ロックをオフにしてください。 つまり、iPhoneを横向きにして画面を手前にして収録すれば良さそうです。

一方、「オーディオ・レコーダーapp」は今一判然としませんので、取り敢えず、ステレオ収録は下に示すマイク設定にして同じ様に対象の収録音源に向かってiPhoneは横向きで画面が手前に来る様にして収録することにしました。

マイクの設定画面

ステレオマイクapp

マイク設定(赤枠

録音画面(横向きで録音)

オーディオ・レコーダapp

マイク設定(赤枠

録音画面

参考:マイク位置が分かるWebページ
URL:https://www.iphone-support.jp/case/microphone/ 

 

簡単な録音音質評価テスト

夫々のアプリの実力を調べるために「収録出来る上限周波数」「収録時のビット深度」の2つの項目で、録音したファイルの音質評価を行うことにしました。

評価
1
収録ファイルの上限周波数は?

スピーカからピンクノイズを発出して、このピンクノイズを収録して上限周波数を調べる方法等がありますが、今回は簡単にテストする方法として、防音室(出来るだけ静かな場所)で無音収録して、暗騒音(ノイズ)のスペクトルから録音できる上限周波数を推定することにしました。

備考)念のためピンクノイズ収録テストを追加しました。後段の「Pink−Noizeによる追加テスト」を参照してください。(2024/1/23)

下のスペクトルは、夫々のアプリで無音収録した後、Windowsソフトの WaveSpectraに収録ファイルをドロップしてスペクトルを表示させたものです。 横軸は周波数で、最大周波数は、収録ファイルのナイキスト周波数(fs/2)になります。

ステレオマイクappの収録ファイル

録音設定フォーマット
Wave fs=48khz bit深度 32bit
上限周波数(Cut-Off):19khz

オーディオ・レコーダappの収録ファイル

録音設定フォーマット
Wave fs=96khz bit深度 24bit
上限周波数(Cut-Off):19khz

ポイント

暗騒音のスペクトルから分かること

本来的にハイレゾで収録出来たとすると、スペクトルに青色点線で付記した様に、暗騒音レベルはナイキスト周波数(=fs/2)までダラダラとレベルが低下して行く筈ですが、収録ファイルの暗騒音レベルは、双方のアプリ共にナイキスト周波数の手前の19khz付近から、量子化ノイズ(ノイズフロア)に向かって急減していました。 双方のアプリで19khzでカットされているのでiPhone se2の仕様によるものと思われます。

このことから、内蔵マイクで録音できるアナログ系の上限周波数は19khzであることが判りましたので、残念ながらハイレゾの定義からは外れています。 但し、CD音質の22.05khz(44.1khz/2)には及ばないものの、上限周波数が19khzであれば音質的には十分満足するレベルでは無いでしょうか。 

また、サンプレート(fs)の設定は、ナイキスト周波数=fs/2 が19kHzを超える44.1khz又は48khzに設定すれば十分です。 なお、fsをハイレゾの96khz以上に設定するのはファイルサイズだけが大きくなり無意味です。

Pink−Noizeによる追加テスト(2024/1/23)

Pink−Noize(-20db)wavファイルをスピーカ(KF-IQ90)で再生し、「ステレオマイクapp」で収録しました。 下のスペクトルで示します様に、19khzまで収録されていることが確認出来ました。

 

評価
2
収録ファイルのビット深度は?

収録ファイルの量子化ノイズ(ノイズフロア)レベルを確認することで、ビット深度を推定することにしました。

下に示すグラフは、ビット深度の設定を変えた時の収録ファイルで、量子化ノイズ付近にフォーカスしてスペクトルを描画したものです。 量子化ノイズは、21khz以上のフラットな部分になります。

グラフ化の方法は、収録ファイルをAudacityに取込み、周波数分析したtextデータをNumbersで19khz〜24khzのスペクトルを描画したものです。

ポイント

スペクトルから分かること

16bitのダイナミックレンジの最大値を0dbにした時の理論的・最小値は、【 -(6.02 * 16 + 1.76) = -98.96 dB】になります。 ところが、スペクトルで見た量子化ノイズ・レベルは、22khz〜24khzの平均で-132dbになって、何らかの要因で、理論値との差(オフセット)が-34dbあります。

このことから24bit、32bitの量子化ノイズにオフセット-34dbを加味して算出すると、24bitの場合【 -(6.02 * 24 + 1.76) - 34 = -180 dB】 32bitの場合 【 -(6.02 * 32 + 1.76) - 34 = -228dB】になります。 これは、上図の量子化レベルと略一致しました。

つまり、「録音時に指定(設定)されたビット深度は、収録ファイルに正しく反映されている」ということが分かりました。 また、ビット深度を24bit以上に設定すればCD(16bit)を超えるDレンジと低歪率が得られることが推定できます。

 

録音音質評価テストのマトメ

  1. iPhone SE2の内蔵マイクで録音できる上限周波数は、19khzになる。 録音設定は、サンプルレート44.1khz 又は48khzを選択すべきです。(96khz以上のサンプルレートはオーバースペックで設定する意味はありません。)
  2. ビット深度の設定は、収録ファイルに正しく反映されている。 ファイルサイズは大きくなりますが録音尤度が高く歪率が少ない24bit以上で録音設定することが望ましいと思います。
  3. 結論
    fs=48khz(又は44.1khz)、ビット深度を24bit以上の録音設定にすれば、フォーマット上のハイレゾの定義は満足しますが、上記1項の録音できる上限周波数が19khzになるので、実質はハイレゾ録音と言えません。

 

どちらの収録アプリが良いか?

音質面から見ると、どちらのアプリも同等と思います。 一方、実用面から見ると以下の点で、課金(400円)は必要ですがステレオマイクappに軍配が上がると思いました。

  1. ステレオマイクappは、収録する時のiPhoneの向きが分かり易い。
    (オーディオ・レコーダappは、iPhoneをどちらの向きで収録すべきか良く分からず例えば、横向きで収録すると左右の音レベルが違う)
  2. ステレオマイクappは、入力レベル調整ができるので、収録後Audacity等でノーマライズできる。
    (オーディオ・レコーダappは、入力レベル調整ができず、入力を絞れないので、折角のハイビット深度(24bit以上)で収録できるメリットを活かせない。)
高音質で収録するヒント、
ステレオマイクappの場合は、ひと手間掛かりますが、録音レベル調整が出来ますので録音時の入力レベルをできるだけ絞って32bit設定で録音し、Audacity等のアプリで-3dbでノーマライズ(増幅)すればクリップ無く良好な音質で録音出来る事が期待できます。 
残念ながら、オーディオ・レコーダーappには入力レベル調整機能はありません。

 

オペレータ
オペレータ
ここから、ピアノ収録に移ります。
オーディオ・レコーダappは基本的には課金フリーですが、実用面からステレオマイクappでピアノを収録することにしました。

 

♬ ステレオマイクappでピアノ演奏を収録してみました。

入力レベルが調整できる「ステレオマイクapp」を使った収録手順は以下の通りです。

簡単な流れ

  • ステレオマイクappのwav 48khz 32bit設定入力レベルを絞ってピアノ「バッハのフランス組曲 第5番 アルマンド」を収録
  • 収録レベルを最適化するため、Audacity appに収録ファイルを取込み、-3dbにノーマライズした後、wav 48khz 24bit で書き出す。
  • XLD appでAAC 48khz 256kbps に変換も行ってみました。

 

バッハのフランス組曲 第5番 アルマンド

 

収録したファイルのスペクトルとステレオ確認(動画)

Windowsソフトの WaveSpectraを使ってリサージュ図形(X-Y)で確認したところ、ステレオで収録出来ていることが確認出来ました。

ステレオ感は左右の音の位相差で奥行き感が生まれます。 この位相を見るためにリサージュ図形(動画の4角枠)で確認できます。(モノラールの場合は同相ですので、45度の直線になります) 

 

 

以上、iPhoneの内蔵マイクが使える録音アプリのレビューでした。 iPhone SE2の内蔵マイクではハイレゾ録音は出来ませんでしたが、その実力はビット深度を24bit以上で設定すればCD(16bit)を超えるDレンジと低歪率でステレオ収録が期待でき、例えば、ピアノ発表会等での収録にも手軽に使えるのではないでしょうか。

 

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