
以前の記事では2.5khzのノコギリ波をAAC変換した時の波形の再現性を主眼にした音質評価でした。
今回は、iTunesアプリが、macOS Catalinaから、Apple Music Appに整理されたこともあり、ここでAAC変換時の定性的なF特や歪率の評価について再評価を行ってみました。
評価方法は、定性的な音質特性を見るために、AAC変換時のビットレートを変えて①ハイレゾフォーマットの1khz正弦波をAAC変換した時の歪率特性、②ピンクノイズをAAC変換した時の再生周波数特性(F特)を確認します。 更に、リアル音源で高域に暴れ(剥がれ)が無いかを確認してみました。 比較するAAC変換アプリは、XLD CLI版を組込んだAutomatorアプリです。
Music Appでハイレゾ音源をAAC変換する方法
今までのiTunesと同じ方法でAAC変換できます。
簡単な流れ
- AAC設定
AACの設定は、Music Appの 環境設定 > 読込設定 カスタム設定でビットレートを設定する。 下のスクリーンショットは320kbpsの例です。
- ハイレゾ音源の読込み
ハイレゾ音源(wavファイル)をMusic Appへドラッグ・アンド・ドロップすることで、ハイレゾ音源が読み込まれます。 - AACにエンコードする
読み込まれたハイレゾ音源を選択した状態で ファイル > 変換 > 「AACバージョンへ変換」を選択するとハイレゾ音源がAACファイルへ変換されて出力されます。 AACファイルの生成場所は、「曲の情報」からファイル場所が参照できます。
詳しくは、「Apple Music Appで〜ファイル形式に変換」を参照ください。
注意ポイント
- Music Appでは、AACのビットレートモードの設定は可変ビットレート(VBR)を選択するかしないかの二者択一になっていて、明示的にCBRを選択できません。 ここでは、VBRを選択していない状態でエンコードした場合を仮にCBRでエンコードしたということにしています。
(追記2024/10/15:可変ビットレート(VBR)のレ点を外すと「ABR」になることが分かりました。 以下の必読・記事を参照)
- ハイレゾ音源のフォーマットがwavでないとファイルが読み込まれません。
- Music Appのバージョン
ミュージック.app(1.2.0.273) macOS 12.0.1(21A559)Monterey
1khz正弦波(24bit 192khz wav)をAAC変換した時の歪率特性
- -3db以下で、歪率が0.01%(THD+N)になり、ビットレート160kbps,320kbps共に略同じ歪率になる。
- -10db以下で、CD歪率を下回る。
- -60db以下で、24bitハイレゾ歪率と略一致する。
ポイント
- XLD CLI版と比較すると、Music appは歪率的に劣っているも、-3db以下であれば、歪率0.01%(THD+N)をキープできる。
- Music appでハイレゾの歪率を極力損なわず高音質を狙うなら、320kbpsを選択すべきと思われる。
AAC変換した時の再生周波数特性(F特)
この周波数特性(F特)は、-20db pink-noise(24bit 192khz wav)を利用して元のwavとAAC変換後のスペクトルの差分(絶対誤差)を求めてグラフ化しています。(詳しくは、後段参照)
下段のグラフは再生できる周波数特性(F特)の全体像を見たもので、非常に良い特性を示していると思います。 特筆すべきは、ハイレゾ音源をダイレクトにMusic appでAAC変換しても高域減衰が生じていないことです。 つまり、高域減衰対策が不要です。 (高域減衰の詳細は、ここをクリックして参照してください)
160kbpsの上限周波数は、17.9khz、320kbpsの上限周波数が23.7khz(殆ど48khzのナイキスト周波数)になっています。
ポイント
- Music appの上限周波数が320kbpsで23.7khz、対してXLD CLI版は22.8khzでMusic appがF特優位(約1khz上回る)
- ハイレゾ音源をダイレクトにMusic appでAAC変換しても高域減衰が生じない。
リアル音源で高域に暴れ(剥がれ)の有無確認
以前の「Windows版foober2000アプリ評価」記事で、ハイレゾ・リアル音源をAAC変換したファイルで周波数20khz付近でスペクトルに暴れが生じる事象が見られました。(VBR?) これは、音源のフォルテ部分とピアノ部分の変動で再生帯域が変動する様です。 この事象はシンバルなど、再生上望ましくないと考えられます。
そこで、WaveSpectra でリアルタイムのスペクトルを見て再生帯域の変動が無いかを観測しました。
なお、リアル音源のソースは、ベートーベン 交響曲第8番 2楽章(カラヤン ベルリン・フィル ) 1962年録音のレコードをハイレゾ録音したものです。 (動画はこのソースの一部を掲載)
ポイント
F特で確認した通りのスペクトル帯域幅で再生されており、高域の暴れが無いことが確認できました。
念の為、Music appの設定でVBRでも確認しましたが、高域暴れは確認出来ませんでした。
Music appのAAC音質・総合評価
先ず、特筆すべきは、ハイレゾ音源(fs=192khz)をダイレクトにMusic appでAAC変換(fs=48khz)しても高域減衰が生じないことが判りました。 例えば、ビットレート320kbpsでは上限周波数が23.7khzになり、CDの再生上限周波数(44.1khz/2=ナイキスト周波数:22.05khz)を優に超えることが出来ます。
残念ながら、歪率特性がXLDに比べて若干悪いことが判りましたが、320kbpsであれば、CD歪率と遜色ない歪率を得られ-10db以下ではCD歪率より低減できるので、CDで行われるディザリング処理(量子化ノイズ対策のためにノイズを付加する)は不要になると思われます。(ディザリングについては、ここをクリック)
総合して、ハイレゾ音源をMusic app でAAC変換するなら、CBR 320kbpsで設定することをオススメします。
以上、Apple Musicアプリ(iTunes)でハイレゾ音源をAACに変換した時の音質評価・結果でした。
「5つの視点」で6種類のAAC変換アプリ・ランキング
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