前回記事(その1)に引き続いて、ハイレゾ音源からCD音質を凌ぐAACにエンコードが可能か?Windowsのサウンド定番アプリfoober2000を使った場合の紹介です。
結論から言いますと、foobar2000 のフォーマット変換設定によりオールインワンで簡単に「ハイレゾをダウンサンプリングしたあと、AAC変換できる」と言うメリットもあり、更に正弦波を使った歪率評価ではCD音質よりも非常に優秀な結果が得られました。
しかし、残念ながら実際のリアルサウンドのハイレゾとの差分スペクトルを見るとAAC上限周波数付近でスペクトルに暴れが生じており、この点からCD音質を凌ぐとは言い切れない結果となってしまいました。 この結果と経緯の紹介です。
foober2000・歪率から見たAACエンコーダの選択
注意ポイント
ここでは、foober2000へのエンコーダ・インストール方法等は省略します。(以下のブログに詳細が記載されていましたので、ご参照してください)
foober2000のエンコーダは、「foobar2000 Free Encoder Pack」をインストールします。 標準搭載されているAACエンコーダは、Neroエンコーダです。 また、Apple AACも iTunesをインストールすることでAppleAACエンコーダも利用することができます。
NeroエンコーダとApple AACエンコーダのどちらが、歪率的に優れているか?「-3db 1khz正弦波 24bit 44.1khz 」Wavファイルを使って(CBR 320kbps)でAAC変換したときの歪率(THD+N)をWaveSpectraで調べてみた結果は以下となりました。
メモ
以上から、ビット深度24bitのハイレゾファイルをAAC変換する場合は、歪率の観点からApple AACエンコーダが数段(60倍)優れていました。 CD音質を超えるためにはApple AACエンコーダを選択すべきことが判ります。(歪率の測定方法は下記参照)
foober2000・リサンプラーとApple(AAC)エンコーダを組合せたAAC変換設定
以上の様に、Apple AACエンコーダの歪率が優れていることが判りました。 ここで問題は、周波数特性(F特)です。 Apple AACエンコーダで例えばサンプリング周波数がfs=192khzのハイレゾ音源をダイレクトにCBR 320kbps でAAC変換(fs=48khz)しても高域に減衰が生じます。
この高域減衰は、以前の記事で述べた通りの結果でした。 fs=192khzのハイレゾ(24bit)をCBR 320kbps でAAC(48khz)で変換した時の高域減衰量が最も大きく、fs=44.1khzのハイレゾ(24bit)をCBR 320kbps でAAC(44.1khz)で変換すると高域減衰量がゼロでした。 このことを表したF特グラフを参考として以下に示します。
以上から、折角CDフォーマットより歪率が少ないAACエンコーダを選択しても、ハイレゾ音源をAAC変換すると高域が減衰してしまい、CD音質よりF特上で悪化することを示しています。
対策ポイント
この高域減衰を回避するには、AAC変換する前に、予めハイレゾ音源を、例えば48khz(又は44.1khz)にダウンサンプリングした後、AAC変換すれば、AAC変換時の高域減衰を回避できます。 但し、AACのビットレートによっては、本質的に上限周波数の制限を受けますので出来るだけビットレートは高くする必要あります。
< foober2000の優れた機能 >
- foober2000のファイル変換設定を行えば、ダウンサンプリングできるリサンプラー(PPHS)を経由してAppleAACエンコーダを利用できます。 つまり、AAC変換したいハイレゾ音源をPlayingエリアに入れてConvert することで自動的にダウンサンプリングした後、高域減衰を回避したAAC変換ができる様になります。
- foober2000は音源フォーマットがWavでもFlacファイルでも対応しています。
- 特にFlacファイルですとそのタグ情報を殆ど毀損すること無しに、変換されたAACファイルに引き継がれます。
以下に「リサンプラー(PPHS)」を経由して「AppleAACエンコーダ」を利用するfoober2000の設定手順を示します。
foober2000・リサンプラーを組合せたAAC変換設定手順
step.3
再び、Playingエリアにある、AAC変換を行いたいハイレゾファイルを選択して右クリックし、ドロップダウンリスト(Fig-1)から ... をクリックすると、Fig-3に遷移します。 出力形式をクリックして先程のApple(AAC)を選択してBackします。 次に、プロセスをクリックして、Fig-4の様にResampler(PPHS)を選択します。 更に、選択されたResampler(PPHS)の ... をクリックしてサンプリング周波数:48khzに設定します。
Fig-3に戻り、Convertボタンをクリックすれば、ハイレゾファイルが48khzにダウンサンプリングされた後、設定されたCBRとビットレートでApple(AAC)に変換されたファイルが、ハイレゾファイルと同じホルダーに出力されます。
以上の設定で、オールインワンでハイレゾ音源はResampler(PPHS)を経由してダウンサンプリング(48khz)した後、Apple(AAC)エンコーダでAAC変換される様になります。
この設定で、ビットレートを変えた時の歪率特性と周波数特性を示したのが以下になります。
ビットレートを変えたAACの歪率特性と周波数特性
以上の評価結果から、以下の条件でハイレゾ音源をAAC変換すれば、CD音質を凌ぐ可能性があると思われました。
- リサンプラー(PPHS)で48khzにダウンサンプリングすること
- Apple(AAC)エンコーダーで256kbps以上のCBR ビットレートにすること
ではfoober2000で、AAC変換したリアルサウンド♫を聴いてみてください
この音源は、1962年に録音された「オイストラフが弾くJ.S.バッハ: ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041」のレコードからVinylstudioでハイレゾ録音(FLAC 24bit 192khz)したものを、CD音質を超える(と思われる)条件でAAC変換したものです。 比較のために、XLDでCDフォーマットにダウングレード(16bit 44.1khz)した音源とオリジナル・ハイレゾFLAC(24bit 192khz)音源も合わせて掲載しておきました。
AAC 48khz 320kbps |
BWV1041第1楽章 | foober2K AAC CBR 320kbps 48khz |
FLAC 24bit 192khz |
CD 16bit 44.1khz |
File Size | 9.9MB | 145.6MB | 43.1MB |
圧縮率 | 7% | 100% | 30% |
各音源(ハイレゾ、AAC、CD)のスペクトル比較
以下のスペクトルグラフはAudacityに添付のBWV.1041第1楽章の音源を取り込み、関数窓をhanning、size16384にて「先頭から54.6秒間」のスペクトルを観測しています。 スペクトルは、テキストデータとして書き出せますので、このテキストデータからNumbersでスペクトルをグラフ化しています。
尚、AAC及びCDの音源はFLAC(fs=192khz)のスペクトルの周波数軸に合わせるために、Audacityに音源を取り込み、トラックを192khzにアップサンプリングした後に周波数解析(スペクトル)を行っています。
比較のため同一条件で他のアプリでスペクトルを確認してみました(参考)
マトメ
foober2000アプリによるAAC変換は、正弦波を使った定性的な特性では、XLD、Apple Degital Mastersの歪率特性で優っていますが、実際のリアル音源でのスペクトル比較では、残念ながらCD音質を凌駕できるとは言い難い結果でした。(若しかするとWindowsOS上の問題なのかも知れません)
現時点 当ブログの評価から、ハイレゾ音源をAAC変換後の音質に順位を付けるなら以下の通りと思われます。 尚、BWV.1041第1楽章のAACファイルサイズが最も少なかったアプリは、Apple Degital Mastersで8.4MB(foober2K:9.9MB)でした。
XLDアプリ > Apple Degital Masters > foober2000
以上、CD音質を凌ぐためにfoobar2000 を使ったAAC変換設定方法を調べて来ましたが、残念ながら今一歩の結果でした。 今回の評価方法が、ご参考になれば幸いです。
「5つの視点」で6種類のAAC変換アプリ・ランキング
この記事のランキングも含まれています。(2023/2/14追記)
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「5つの視点」で再評価。 ハイレゾ音源をAAC変換する24bit対応AACエンコーダ(アプリ)の評価ランキング
今迄、レコードからハイレゾ録音した音源をAACに変換する時に極力音質を劣化させず、CD音質を凌ぐにはどうしたら良いか?自分流で試してきた結果を投稿しました。 ただ、評価に統一性がないとこ ...