広告 ハイレゾレコーディング

レコードをハイレゾ化するならDSDかPCMか?

スポンサーリンク

 

ことの 発 端

ことの発端は、あるハイレゾDLサイトから、チャイコのバイオリンコンチェルトをPCM(Flacファイル 192Khz、24Bit)で購入しました。WAVファイルも平行販売されています。

たまたま、このPCMファイルを、Audacityでスペクトルを見たところ、高域(40khz以上)に異常と思われる成分が存在しています。

sonyのHAP-Z1ESで再生し録音した結果も、同様に高域異常?がありました。

この高域異常は何であるか、色々調べて行くうちに、購入したPCMファイルは、元々DSDソースをPCM変換して販売しているのではないか?と思い至りました。

 

スポンサーリンク

 

 

高域異常の 原 因 推 定

DSDは、PCM(アナログ量の数値化)と違って、1BitのデルタシグマADC(変調方式)で、音声レベルに応じてパルス幅が疎密的に変化する方式です。

このデルタシグマADCは、量子化ノイズ(誤差)を高域に追いやり(ノイズシェーピング)ますので、アナログに復調(DAC)するには、簡単なローパスフィルター(=積分器)を通して、多分100Khz以上のノイズをカットしてアナログに復元します。

しかし、ノイズシェーピングによるノイズは、40Khz付近から増加しますので、100KHzのローパスフィルターでは、このノイズ成分の残渣が残ります。

よって、このDSDファイルをPCM(192Khz、24Bit)に変換した場合、サンプリング定理から、エイリアシング・フィルタは、サンプリング周波数の半分(192Khz÷2=96Khz)以上でハイカットしているので、40KHz~96KHzにあるノイズ残渣成分は取り除かれず、上図の高域異常が生じる原因と思われます。

 

高域異常部分を試しに抽出

この高域異常部分の波形を、Audacityで、30Khz以下をLow cutし抽出たのが、この波形です

0.1Vp-p程度のレベルが観測できます。可聴帯域外ですから、問題は無いと思われるもの、アンプとしては、無駄な電力を消費してしまうことになります。 最悪、ツイータを焼損する恐れもあります。

 

実際のDSD64ファイル(2.8Mhz)では如何に

では、HAP-Z1ESに入っていたミュージックサンプル、DSD64ファイル(2.8Mhz)を再生するとどうなるのか?をHAP-Z1ESで再生して録音(Flac192Khz、24Bit)してみました。

矢印の様に、やはり、DSD再生でも、高域成分が存在しています。

 

FlacファイルからXLDソフトで、DSD64(2.8Mhz)に試しに変換してみると

次に、レコードをハイレコしたFlacファイル(192Khz、24Bit)をXLDソフトで、DSD64(2.8Mhz)に変換したファイルを、HAP-Z1ESに入れて、再生し、録音(Flac192Khz、24Bit)してみました。

やはり、録音したFlacファイルにも高域異常が見られます。

 

❏ ま と め

ポイント

以上の検証結果から、HAP-Z1ESによるDSD64(若しくはDSDをソースにしたPCM(192Khz,24Bit)変換ファイル)の再生は、高域異常ノイズ成分を含みます。
この高域ノイズは、オーディオアンプ周波数帯域内にあり、不要な電力も消費し、混変調歪も発生する原因にもなり得ると思われます。 最悪、ツイータの破損につながるかもしれません。

PCMで録音する方が、DSDに見られる高域異常ノイズの発生無く、PCMファイルであればレコードのプチノイズ除去等の波形編集もできるので、 レコードをハイレゾ化(ハイ・レコ)するならPCM(192Khz,24BitがBest)でレコーディングするのが得策と思われます。

また、ハイレゾのダウンロード(DL)購入は、DSDを避け、 サンプリング周波数が96Khz以下の PCMを購入すべきかと思われます。(サンプリング周波数が96Khzであれば、48Khzでフィルタリングされるので、殆ど高域異常ノイズは再生されないと思います。)

 

 

レコードをハイレゾ化するADC

レコードをハイレゾ化するには、レコードプレーヤから出力されたアナログ信号をハイレゾ対応のADC(Analog Digital Converter)でデジタル信号に変換しUSB経由でPCに取り込みデジタイズ(ハイレゾ化)します。 (詳しくは、「レコードのハイレゾ化のススメ」を参照してください。)

一般的にレコードプレーヤーから出力される信号はmV単位ですので、フォノアンプ(RIAAイコライザ)内蔵ADCをオススメします。 但し、プレーヤで使われているMMカートリッジは、出力電圧が高いので問題ありませんが、低出力電圧のMCカートリッジ(Ex.オルトフォンのMC20は0.07mV)ではフォノアンプのゲインが不足し昇圧トランス等が必要になる場合があります。(2022/11/15追記)

レコードをハイレゾ化する USB ADC

 

ノイズシェーピングのシミュレーション

DSDのデルタシグマADCについて、調べてみました。 デルタシグマ回路は、原理的には非常にシンプルな回路構成で成り立っています。(実際には、段数を増やしていますが。)

CQ出版社の ネットに掲載されている「ΔΣ変調を使用したA-D/D-A変換回路はどっち?」の 回路図を利用させて頂き、LTspiceで、色々入力波形を変えてシミュレーションしてみました。

LTspiceは、以下からダウンロードできます。

[https://www.analog.com/jp/design-center/design-tools-and-calculators/ltspice-simulator.html]

<CQ出版社の回路図をLTspiceへ書写しました>


LTspice によるシミュレーションに当たり、クロックは、DSD64(2.8Mhz)にしています。

<シュミレーションの結果>

各種信号源(正弦波、矩形波、三角波)のシュミレーション結果は下のグラフで示します。

正弦波の場合、倍音成分は有りませんので、高域(40khz以上)に発生しているノイズは、シェービングノイズということになります。 正弦波に対して、DSDのクロック周波数を高くするに従って、シェービングノイズのレベルは、低減することが判りました。(下記) ただし、クロックを上げるとDSDのファイルサイズが大きなってしまいます。

70khz付近のシェービングノイズ
・DSD64(2.8Mhz):-60db
・DSD128(5.6Mhz):-70db
・DSD256(11.2Mhz):-80db

 

❏ 1Khz 正弦波入力の場合

DA出力FFT解析

 


❏ 1Khz 矩形波入力の場合

波形拡大

 

DA出力FFT解析

 

 


❏ 1Khz 三角波入力の場合

波形拡大

DA出力FFT解析

 

 


ーさらにー

DSD128(5.6Mhz)と DSD256(11.2Mhz)のシミュレーション

❏ DSD128(5.6Mhz) 正弦波入力の場合

DA出力FFT解析

 

70Khz付近のノイズレベルが約70dbで、DSD64より低下している。

 


❏ DSD256(11.2Mhz) 正弦波入力の場合

DA出力FFT解析

 

70Khz付近の
ノイズレベルが約80dbで、DSD128より低下している。

 

 

ポイント

以上のシュミレーションから、1khz正弦波入力のノイズに着目しますと、クロックをアップすると、下表のように、70khz付近のノイズが低減しますが、ノイズシェービングが残存するのが判りました。

DSD NAME クロック 70khz ノイズレベル 
DSD64 (2.8Mhz) -60db
DSD128 (5.6Mhz) -70db
DSD256 (11.2Mhz) -80db
以上、「レコードをハイレゾ化するならDSDかPCMか?」でした。

 

 

スポンサーリンク

 

スポンサーリンク

 

t