ダイナグルーヴ(Dynagroove)は、1963年に米国RCA Victorによって導入されたLPレコード・システムで、その当時、雑誌やレコード店に行くと広く喧伝されていました。
ダイナグルーヴと銘打った1963年録音『ラインスドルフ指揮によるボストン交響楽団と共演したルービンシュタイン”ベートーヴェン皇帝”』を、そのPRに乗って、ついつい購入してしまいました。
宣伝の割りには、その音質はイマイチでしたが、第2楽章の演奏が痛く感動したのを覚えています。 今回は、このLPレコードのハイレゾ化とダイナグルーヴの紹介を中心にブログしてみたいと思います。
ダイナグルーヴとは何なのか?
ダイナミックはその言葉とおりとして、グルーブはレコードの溝で、これを合わせた合成語と推察されます。 このレコードに付いていた説明を見てみます。
-DYNAGROVE-
(画像の説明文を文字に起こしてみました。)
このダイナグルーブ方式のレコードは、録音するときからレコードになるまで、数々の新しい研究の成果を組合わせて、これまでにない明快な音を生み出しています。
それは、最新の電子技術、音響心理学、品質管理技術により、新しい録音機器、電子頭脳、品質管理方式を開発して生み出したレコードです。
四つの特色
ポイント
- どんな音量でも輝くような音が聞けます。
プレーヤーの音量をどんなに小さくしぼっても、低音から高音まで鮮明に聞くことが出来ます。 - 完全なプレゼンス(臨場感)が得られます。
このレコードでは、いつも生々しい演奏を聞くことができ、コンサート・ホールにいるような印象を受けます。 - 歪がないこと 。
このダイナグルーブ方式のレコードでは盤面の内側でも音が歪みません。 - そのまま皆様の機械にかけて完全な音が聞けます。
ダイナグルーブのレコードは、どんなステレオ電蓄でも、これまでにない素晴らしい音が聞けます。
以上のように大変大仰な説明ですね。 ダイナグルーブについて、米国ウィキペディアからポイントと思われる部分のみ引用してみますと(Google翻訳)
https://en.wikipedia.org/wiki/Dynagroove
Dynagrooveは、1963年にRCA Victorによって導入された録音プロセスで、初めてLP用のマスターディスクを作成するために使用されるオーディオ信号をアナログコンピュータで変更しました。その目的は、静かなパッセージで低音を強調し、使用中の準拠性の低い「ボール」または球形の再生カートリッジの高周波トレースの負担(歪み)を減らすことでした。 /中略/
Dynagrooveプロセスはトレース補正を使用していました。これは記録溝を事前に歪ませて、特に高周波では正確に記録溝を追跡できなかった円錐形のレコード針を使った再生によって生じる歪みを相殺するためです。LPの内側の溝に。このプロセスは、1964年以前のフォノグラフカートリッジの典型的な円錐形スタイラスによる再生でうまく機能しました。しかし、楕円形のスタイラスでDynagrooveレコードを再生すると、この歪みが聞こえるようになりました。1960年代の10年間が進むにつれて、高品質の再生カートリッジはだんだん楕円形のスタイラスを使用するようになりました。この開発により、1970年頃までに追跡補償が廃止され、RCAはこの手法の使用を静かに中止しました。
Dynagrooveで使用されている他のテクニックはダイナミックイコライザーでした。そして、それは音の大きさに従って録音の音質を変えました。/中略/
RCAは、1970年にトレース補正の使用を中止したのとほぼ同じ頃に動的等化の使用を中止しました。
ダイナグルーブを簡単にマトメると、
『コンプレッサーとラウドネスコントロールで音質を味付けし、円形スタイラスに対して内周歪をキャンセルするように歪ませているシステム』と言えますね。 この技術的な訴求ポイントはオーディオの本筋から外れており、1970年には消えて行ったということでしょう。
それでは、ルービンシュタイン”ベートーヴェン皇帝”を聴いてみます
クレジット
指揮– Erich Leinsdorf
Orchestra – Boston Symphony Orchestra
ピアノ – Arthur Rubinstein
Producer – Max Wilcox
Recorded By – Anthony Salvatore
録音年-1963年
再生カートリッジ-オルトフォンMC20
録音フォーマット-192khz 24bit FLACで録音(AAC:128kbps)
ルービンシュタイン「ベートーヴェン・ピアノコンチェルト 皇帝」
AAC 48khz 128kbps
このダイナグルーブのレコードを聴いてみると、盤質も良くないこともあるのですが、残念ながら解像度感があまりなく録音が良いとは思われません。 またダイナグルーブに由来するためか、低域が若干強調されている様に思われます。
とは言っても、我が家にある「LPレコード:バックハウス盤」と「CD:ポリーニ盤」と比較しますと、「ルービンシュタイン盤」のピアノの音質が最もそれらしく聴こえ、貴公子然としたルービンシュタインの弾くピアノが「皇帝」のイメージに合っていてラインスドルフ指揮によるボストン響も好演だと思います。