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フルベンの「英雄」ブライトクランク盤のハイレゾ化と擬似ステレオの実験

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フルベンことフルトヴェングラーが指揮しウィンフィルとの共演で1952年に録音したベートーベン・英雄のモノラール音源を元に、エンジェルが1964年(60年前)疑似ステレオのブライトクランク盤(エレクトローラが開発)を発売しました。 

フルベンは、ステレオ録音のレコードが少なく(殆どない)、当時ステレオブームということもあり、賛否両論ありましたがこのブライトクランク盤が発売されたようです。

今回は、フルベンの「英雄」ブライトクランク盤とオリジナルのモノ盤を試聴比較すると共に、音の広がりを目視するためリサージュ波形でも比較してみました。 更に疑似ステレオとはどの様なものかを深堀りするために、実験的にリヒテルの「展覧会」モノ盤を擬似ステレオ化してみました。

 

 

ブライトクランクとは

下にレコード説明に付記されていたドキュメント(画像)を示します。 この説明を要約すると『ブライトクランクによって一般的な疑似ステレオと一線を画して「音の広がり、暖かみ、豊かさ、そして音の深さ」を味わえるようになった』との誇大表現に終始して、ブライトクランク・システムの原理的な記述がないのが残念なところです。(この時代を表していいますね)

ポイント

一般的な疑似ステレオの原理は、ウィキペディア(Duophonic)によりますと、「モノラル信号を2つのチャンネルに分割し、 ディレイラインやその他の回路を使用して左右の信号を遅延させます 。つまり、2つのチャンネルを1秒未満で非同期化し、1つのチャンネルのベース周波数をハイパスフィルター 、そしてローパスフィルターで他のチャンネルの高音周波数をカットします 。」とのことで、多かれ少なかれこのような処理をブライトクランクでも行っているものと推察します。

なお、後記に簡単な疑似ステレオ化の実験も行いましたのでご参照ください。

 

♫ それでは、フルベンの英雄(ブライトクランク盤)を聴いてみてください。

サンプル音源はフルトヴェングラーとウィンフィルが1952年に録音したベートーベン・英雄の4楽章(ブライトクランク盤)です。 

オリジナルモノラール盤(注記参照の音質と比較しますとブライトクランク盤は確かに音の奥行きが感じられ聴き易くなったように思われます、力強さが減少しているようにに感じます。 音楽的にはモノラール・オリジナル盤に軍配が上がるかも知れません。 ここらへんが擬似ステレオの賛否が分かれるところですね。

 

注記

比較試聴したモノラール・オリジナル盤は、何時もクラシック音源を試聴させて頂いているBlue Sky Labelから今回もDLさせて試聴させて頂いたものです。

 

音の広がりをリサージュ波形で確認してみます。

音の広がりはステレオのRchとLchの位相に関係しますので両chの位相をリサージュ波形で確認してみました。

1.ブライトクランク盤の場合

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確かに位相がランダムに変化しステレオ化されているように見えますが、通常のステレオ録音より同相成分が少ないようです。

これは、疑似ステレオの場合、モノ音源を左右の信号を遅延させているので、同相になる確率が殆ど無いからと思われます。

.オリジナル・モノ盤の場合

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当然ながら、右45°のラインを示し、略同相で収録されています。

.(参考)カラヤン指揮ブラームス交響曲2番4楽章・ステレオ録音盤の場合

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ちょっと分かりにくいと思いますが、疑似ステレオより同相成分が多く含まれているのが分かります。

ポイント

以上をマトメますと、

ブライトクランク盤は、モノ音源をステレオ左右chを遅延させているために同相になるタイミングが殆どなくなるので、リサージュ波形上、右45°の同相成分が殆ど出現していないことが分かりました。 

これは、音の広がりは感じられるものの、中央に定位することがなくなり、逆相成分も多く、力強さの減少や不安定感を覚える要因かもしれません。

「Osciloppoiを使ったリサージュ波形の例」については、下の記事もご覧ください。

疑似ステレオの実験

以前投稿したリヒテルが弾く「展覧会の絵」モノラール盤を簡易的に疑似ステレオ化をしてみました。

モノラール
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リヒテルの「展覧会の絵」モノラール盤をVinylStudioでハイレゾ化しました

  リジナルの「展覧会の絵」は、ムソルグスキーが、ピアノ組曲として作曲されました。 ピアノ演奏で名盤の一つにリヒテルがブルガリアの首都のソフィアでライブ演奏したものが有名です。 今回は、1958年のモ ...

疑似ステレオ化の方法はネットをググると色々出てきます。 今回は、モノラールレコードをデジタル化したキエフの大門AudacityRchを遅延して疑似ステレオ化するという単純な実験です。 その手順は以下の通りです。

 

step
1
モノラールデジタルファイルを2chにする

モノラール録音デジタル化したキエフの大門をAudacityに取り込んだ後、トラック新しく追加モノトラックをクリックすると、新しい空のモノトラック(下段)が追加されます。

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取り込んだモノ音源(上段トラック)を全選択してコピーし、追加された下段の空トラックにペーストする。 これで2chになる。

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step
2
空白時間をコピペして音源を遅延させる

もう一度、トラック新しく追加モノトラックをクリックして新しいモノトラック(最下段)を追加させ、下の様に新たなトラックの空白時間を選択して2chの音源にペーストする。

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step
3
遅延時間の長さを調整してステレオ化させる(完成!!)

遅延時間の調整は、ペーストした空白時間を選択して【Delete】ボタンを押せばカットできます。 必要な遅延時間を残して空白時間をカットして時間調整します。 遅延時間の調整が完成したら、先ず上下トラックを全選択した後、上トラックの左画面の【】ボタンを押して、下の様に「ステレオトラックの作成」を実行します。

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ステレオ化したトラックを選択して、ファイル>Export>選択したファイルの書き出し を実行して音源ファイル(例えばMP3など)を書き出しすれば疑似ステレオの完成です。

 

♫ では疑似ステレオを聴いてみてください。

リヒテルが弾く「展覧会の絵」よりバーバ・ヤーガの小屋とキエフの大門です。 
(MP3 320kbps)

疑似ステレオ:遅延時間30ms

MP3 Media Info情報(キエフの大門)

ビットレートモード CBR モード
チャンネル 2ch
ストリームサイズ 11.9 MiB

擬似ステレオを試聴して如何でしょうか? 中々音場が雄大になり聴きやすく拍手の音も自然に聞こえませんか? ただし、モノ盤と比較すると同相成分の減少によるものか?力強さが減少している様に感じます。

モノラール盤:オリジナル

MP3 Media Info情報(キエフの大門)

ビットレートモード CBR モード
チャンネル 1ch
ストリームサイズ 11.9 MiB

※疑似ステレオの場合、ステレオですからチャンネルは当然2chになっていますが、ストリームサイズ(ファイルサイズ)は両者とも変化が有りませんでした。

ポイント

ステレオ化する前に、遅延時間を変化させて試聴した結果、30msがベストでした。

遅延時間 ステレオ化する前の試聴結果
40ms 拍手:OK ピアノ:若干高速連打2重に聞こえNG
30ms 拍手:どうにかOK ピアノ:OK
20ms 拍手:濁り生じNG  ピアノ:Ok

ブライトクランクを開発したアナログ時代にあっては、遅延調整するのに、多分テープレコーダーの物理的ヘッド位置の調整などで大変手間がかったことと想像しますが、現在はPCMでデジタル化されたファイルでは、素人でもいとも簡単に遅延調整ができてしまいます。 全く隔世の感がありまね。

 

リヒテルの弾く「展覧会の絵」モノ盤を単純に左右チャンネルを30ms遅延(擬似ステレオ)するだけで音の広がり感が得られますが力強さは減じて、疑似ステレオ化には一長一短があることが分かりました。

 

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