テストレコード(AD-1)を利用してターンテーブルの回転数偏差をチェックする

投稿日:2018年7月1日 更新日:

我が家のDDプレーヤ(購入後20年以上経過)の回転数偏差がどの程度の実力にあるのか?日本オーディオ協会のオーディオ・チェックレコード(AD-1)を使ってターンテーブルの回転数偏差を測定(チェック)してみることにしました。 回転数を測定しようと思い立ったきっかけは、「我が家のB級オーディオ」のDDプレーヤでハイレゾ録音した演奏時間とe-onkyoからダウンロード購入したデジタル音源(レコードと同じ同一曲)の演奏時間とを比較すると下記の演奏時間の実例の如く、レコードからハイレゾ化した演奏時間の方が短かった(ピッチが早い)からでした。

 

 

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レコードとCDの演奏時間の実例

例1
カラヤン BPO 1962年録音 ベートベンの第8番 第2楽章で、e-onkyoDL音源の場合、演奏時間が3分50.407秒に対して、レコードから録音したハイレゾ音源は0.324秒短く、デジタル録音の再生時間を真値として演奏時間から割出したターンテーブルの回転数偏差は、+0.141%でした。

例2
カラヤン BPO 1962年録音 ベートベンの第9番 第4楽章で、CD音源の場合、演奏時間が23分39.434秒に対して、レコードから録音したハイレゾ音源は10.441秒短く演奏時間から割出したターンテーブルの回転数偏差は、+0.741%でした。

演奏時間の測定は、Audacityを使用しました。

 

回転数偏差をチェックする方法

<その1>
ターンテーブルの回転数をチェックするのに、商用電源の周波数毎に明滅する蛍光灯を利用した、縦縞模様のストロボプレートで縦縞が静止する様に見えるか否かで回転数をチェックする方法が一般的です。

でも、商用電源の周波数偏差は、±0.2%と言われており、正確性に欠けるという点と、数値化できないことが難点ですね。

 

<その2>
そこで、簡単に費用も出来きるだけ抑えた回転数偏差を測定するiPhoneアプリが無いか物色したところ、「RPM - THE Turntable Tester」なるものがあり、早速600円で購入してテストしてみました。

このアプリは、iPhoneに内蔵されているジャイロを使用するもので、ターンテーブルにIPhoneを置いて回転させ、30秒後に測定結果が表示される使い勝手の良いアプリでした。 しかし、以下の様に精度的に問題があることが判りました。

キャリブレーション後に測定した結果は、回転数が33.27rpmで回転数偏差が-0.18%を示しました。 また、回転数が33.27rpmと小数点2桁までの表示では精度的に不満足で、さらに回転数偏差がマイナス(ピッチが遅い)になっていて、前出の演奏時間の偏差が、+0.141%と矛盾する結果になりイマイチ使用できないことが判りました。 ただ、ワウ・フラッターの傾向を掴むには有効かも知れませんね。

 

<その3>
そこで、今回のオーディオ・チェックレコード(AD-1)の出番です。 実は、このテストレコードには、回転数偏差に関する項目がありません。 では、どの様に回転数偏差を計るかを以下に述べます。

回転数偏差の測定方法

テストレコードのバンド(AD-1 収録信号内容)の間には「周回無音溝」で内周に進むのをガードする、周回無音溝が設けられています。 カートリッジの針先が、通常の信号溝と周回無音溝の交差部分を通過すると回転毎に1回クリックノイズがエンドレスに発生することが判りました。 このクリックノイズの周期を正確に測れば、ターンテーブルの回転速度が判ります。

概略手順として、このテストレコードを再生し、この「周回無音溝」をVinylStudioでハイレゾ録音(192khzのサンプリング周波数)します。 録音後、VinylStudioの「Cleanup Audio」画面で、回転毎に一回発生するクリックノイズの周期を測り、Excelなどで、下式による回転数(RPM)に変換します。

 

回転数が分かれば、下式で回転数偏差が算出できます。

なぜ、ハイレゾでしかも192khzのサンプリング周波数で録音するかと言いますと、時間軸の分解能を出来るだけ高めたいからです。 例えば、44.1khzの録音ならナイキスト周波数(fc=fs/2)が22.05khzとなり、分解能は、45usになります。 一方192khzならfcは96khzで、分解能は10.4usになり測定精度が4倍にupするはずだからです。

また、192khzサンプリング周波数に対応できるハイレゾ対応のA/D変換器(GT40α)であれば、A/D変換の内部クロックがppmオーダーと思われるので、回転数偏差の時間測定に十分耐えうるものと思われます。

以下にオーディオ・チェックレコード(AD-1)を利用した回転数偏差の測定方法を図示します。

オーディオ・チェックレコード(AD-1)のコンテンツ内容(参考)

SIDE 1:
バンド1
:周波数スロースイープ信号、20Hz – 20kH、左チャネル
バンド2:周波数スロースイープ信号、20Hz – 20kH、右チャネル
バンド3:機械インピーダンス測定用信号
バンド4:低域共振測定用低域周波数スイープ信号、4Hz – 100Hz、左チャネル右チャネル
バンド5:ワウフラッター測定用信号、3,000Hz、約100秒間

SIDE 2:
バンド1:1/3オクターブバンド・ノイズ、中心周波数25Hz – 16kHz、左チャネル
バンド2;1/3オクターブバンド・ノイズ、中心周波数25Hz – 16kHz、右チャネル
バンド1と2の中間部 無音溝(インサイドフォース測定バンド)
バンド3:位相チェック信号、左右同相、逆相、±45度、±90度、±135度
バンド4:基準レベル、1kHz、3.54cm/sec(尖頭値)、左チャネル
バンド5:基準レベル、1kHz、3.54cm/sec(尖頭値)、右チャネル
バンド6:無音溝

 

では、実際にハイレゾ化した「周回無音溝」から回転数偏差を出してみます

「周回無音溝」にある一周期毎のクリックノイズがハイレゾ録音されているものとして、VinylStudioからどの様に回転偏差を測定するか順を追って説明します。 (なお、若干測定し難いですがAudacityでも、同様に測定できます)

まず、VinylStudioによるクリックノイズ周期時間の測定方法は、ビデオを見てください。

T1測定の始点位置にカーソルを合わせて、VinylStudioの左下にあるカーソル(Cursor)時間を記録します。
この場合は、8分15.26931秒ですね。

 

T2測定の始点位置にカーソルを合わせて、VinylStudioの左下にあるカーソル(Cursor)時間を記録します。
この場合は、8分17.06899秒ですね。



T1の周期は、T1始点とT2始点時間の差ですので、(8分17.06899秒)ー(8分15.26931秒)=1.79968秒が一回転当たりの周期時間です。

これから、T1の回転数rpmは、1.79968秒の逆数に60秒を掛けた、33.33926rpmとなり、回転数偏差は、前記の式から計算しますと、0.01778%になります。

測定バラツキなどを考慮して、この作業をT1〜T10の周期時間を測定し回転数rpmを算出した後、統計データをExcelで算出した結果は、以下の様になりました。


 

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ターンテーブルの回転数偏差の実力は

10回(T1〜T10)測定したターンテーブルの統計データから、平均で、33.338929rpmで、その回転数偏差の平均は、0.016787%という結果でした。 また、±3σ(99.73%まで含まれる確率)を見ますと、このターンテーブルの回転数偏差の実力は0.033779%〜-0.000205%の範囲にあると思われます。

この結果をどうみるか?ですが、PLL・DDタイプのターンテーブルの回転数偏差としては、物足りないと思われるものの、下記引用回転数偏差(誤差)は0.3%以下にすべきから見れば、まずまずの実力かと思います。

「瀬川冬樹のステレオテクニック(レコード・プレーヤー)」の引用
たとえば、音叉で(または正確な発振器によって)正しい標準音を聴かせておいて、それとピッチのちがった音をつぎに聴いたとき、標準音に対してどのくらいの偏差があったら、聴きわけができるか、という実験をしてみると、1000ヘルツの標準音に対して、3ヘルツの誤差が聴きわけのできる限界とされています(440ヘルツでは1・32ヘルツに相当する)。速度の誤差は0・3パーセント以下におさえるべきだということになります。実際の市販品を調べてみると、後で述べるダイレクト・ドライブタイプの高級品では、速度の偏差は0・2パーセント以下に調整されているので問題はありませんが、普及機の場合、偏差が1パーセント以上に達するものもあるので注意が必要です。

<実力の裏付け>
テストレコード(AD-1)の「バンド1」「バンド2」には、周波数スロースイープ信号、20Hz – 20kH、が録音されています。 この周波数スロースイープ信号が始まる前に、パイロット用に5秒間、1khzの正弦波・純音が録音されおり、この1khzを今回と同様にハイレゾで録音し、1khzの周波数を測定すれば、ターンテーブルの回転数偏差に応じた、周波数の誤差が生じる筈です。

ハイレゾ化されたパイロット信号・正弦波1khzの周期は1msです。 この1msの周期時間を測定しようとすると、前述の様に192khzのサンプリング周波数の分解能は10.4usですので、、10.4us/1000us=1.04%の誤差が含まれてしまいます。 その誤差を軽減するため、100サイクル間の時間を測定し100で割り平均化して一周期の時間(T)を求め周波数(1/T)を算出してみます。

その結果、ハイレゾで録音されたパイロット信号1khzの周波数は、1000.30009hzでした。 これから、テストレコード(AD-1)の1khz正弦波の周波数誤差が無いとすれば、周波数誤差は、(1000hz-1000.30009hz)/1000hz=0.030%という結果でした。

この誤差結果は、記録されている1khzの信号には周波数の誤差が含まれ、カッティングマシシーンの回転数偏差も含まれているので、この結果は、あくまで参考値となりますが、前記のターンテーブルの回転数偏差の実力とほぼ符合しており、「周回無音溝」クリックノイズによる回転数偏差の測定法としては妥当性があることが裏付けられたと思います。

レコードとデジタル化音源の演奏時間は何故違う

レコードの作成にしても、CDなどのデジタル音源の作成にしても、共通のマスターテープを業務用の機材を使い、少なくとも再生速度(つまり、音程ピッチ)については、細心の注意を図って製品化されており夫々の音源の再生時間は、殆ど変わらない筈と思っていました。

しかし、今回測定した我が家のプレーヤ(ターンテーブル)の回転数偏差の実力が最悪でも、0.03%(+3σ)に収まることが判かり、我が家のターンテーブルの回転数偏差ではレコードに記録されている演奏時間に影響を及ぼすものでないとすると、何故冒頭の、デジタル音源とレコード音源の演奏時間に差異が出るのでしょうか? (カラヤンの第9に至っては、+0.7%もの演奏時間差があります。)

再生時間の差異が生じる原因としては、演奏が1962年にテープで録音されたもので、レコードはその当時にプレスされ、一方CDの方は、約10年以上経てマスターテープが若干伸びた状態でCDへリマスタリングしたために、演奏時間が遅くなったという見方もあるかもしれません。 または、人為的に演奏時間を変えてリマスタリングされたものかもしれませんね。

ネットでググったら、「レコードプレーヤのワードクロック」というブログが見つかり、このブログの一部を以下に引用さていただきますと、

ビクターの発売する音源が、同じ録音であっても発売時期やタイトル、発売形態によって速度が違うぞってことで、きちんと比較をする目的と、自分の環境でも、もっと再生速度について管理をしたほうがいいんじゃないかということで、ターンテーブルの回転数とデジタル録音のクロックを同期させる試みをやってみました。
/中略/

ドーナツ盤を基準として考えた場合、他の音源の速度偏差をざっと数値化すると、
LP盤+0.1%
ハイレゾ+0.27%
mora配信-0.5% ってな具合です。
まあ、速度偏差が±0%というのはデジタル録音なら簡単に実現できますが、アナログの場合はスタジオのマスターレコーダーであっても少なからず速度偏差が発生します。

実際、聴感上で問題ないレベルに抑える場合、これらの数値から判断するとスタジオレベルなら±0.1%くらいには収めてもらいたいなーといった印象です。

mora配信の-0.5%はプロのスタジオとしてはありえないと思うけど、一体どうしちゃったんだろうね。

以上、ことほど左様に、アナログ録音のレコードとアナログ録音からデジタル化された音源の演奏時間は、製作者によって相当に異なる様です。 つまり、こういう所にも、レコードとCDの音色(音質)の差が生じる原因かもしれません。

 


<テストレコードに関する記事>

 

 


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