当サイトでは、通常192khz 24bitのFLACフォーマット(圧縮レベル5)でレコードをハイレゾ録音しています。(盤質や音質などで96khzに落としてアップする場合もあります)
FLACの圧縮率はサウンドの内容で変化し圧縮レベル5の場合一般的に50%〜60%前後と言われていますが、実際には、どの程度のバラツキがあるものなか?当サイトでアップしているFLACファイルの圧縮率のバラツキを調べてみました。 更に、ピュアー音源を使って、サウンド内容の違いによって、FLACの圧縮率がどの様に変わるかも実験してみました。
なお、圧縮率とは、無圧縮のWAVEとFLACによる圧縮後のファイルサイズの差を比率で表します。
WAVEフォーマットのファイルサイズ(計算)
WAVEファイル(無圧縮)のファイルサイズは、MACではFinder(windowsはExplorer)のファイル情報で確認できますが、ヘッダ情報やタグなどを除いたファイルサイズ(バイト)は、次のように計算で求めることができます。
ココがポイント
ファイルサイズ(バイト)=サンプリング周波数✕ビット深度✕チャンネル数(ステレオ=2ch)✕録音時間÷8(bit)
例えば、1khzのノコギリ波をステレオで6秒間、24bit 192khzでWAVE録音すると、計算上は6912KBと計算できます。 実際のファイルサイズを調べますと、6,912,626 バイト=6912.626KBで計算結果と略同じになります。
つまり、サンプリング周波数、ビット深度及び録音時間が決まれば、サウンドの内容が無音であろうがフォルテであろうがファイルサイズは一定ということです。
ここでWAVEにおける、サンプリング周波数のみ変えた時のファイルサイズを下表にまとめました。
サンプリング周波数 | ファイルサイズ計算値 | 備考 |
192khz | 6,912KB | ビット深度:24bit 録音時間:6秒 ステレオ:2ch |
96khz | 3,456KB | |
48khz | 1,728KB | |
16khz | 576KB |
当サイトのFLACファイルの圧縮率
WAVEと違って、FLACの場合は、サウンドの内容(音のレベル)によって変わります。
そこで、当サイトのサンプル音源・DLコーナーに掲載されているFLACファイルの圧縮率を調べてみました。
ポイント
サンプル音源 DLコーナー | FLAC | 再生時間 | WAVEファイル サイズ (計算値) | ||
サンプル レート/深度 | 圧縮率 | ファイルサイズ (バイト) | |||
ビババルディ四季 秋の1楽章 | 96Khz/ 24bit | 59.1% | 121,851,465 | 358秒 | 206,208KB |
ラベル編曲・ムソルグ スキー展覧会の絵 「バーバ・ヤーガ の小屋」 | 96Khz/ 24bit | 59.0% | 72,430,774 | 213秒 | 122,688KB |
プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲 第2番 第2楽章 | 96Khz/ 24bit | 59.7% | 191,973,201 | 558秒 | 321,408KB |
「セビリアの理髪師」 序曲 | 96Khz/ 24bit | 55.7% | 133,478,361 | 416秒 | 239,616KB |
ブラームス交響曲 第2番 第4楽章 | 96Khz/ 24bit | 57.3% | 179,908,672 | 545秒 | 313,920KB |
ベートーベン 第9交響曲 2楽章 | 192Khz/ 24bit | 57.8% | 353,012,621 | 530秒 | 610,560KB |
ベートーベン 第8交響曲 2楽章 | 192Khz/ 24bit | 48.8% | 133,215,106 | 237秒 | 273,024KB |
チャイコフスキー 交響曲 第6番 悲愴 3楽章 | 192Khz/ 24bit | 54.7% | 328,483,087 | 521秒 | 600,192KB |
チャイコフスキー 交響曲 第6番 悲愴 4楽章 | 192Khz/ 24bit | 53.4% | 349,224,054 | 568秒 | 654,336KB |
ストラヴィンスキー 春の祭典 えらばれた 少女 | 192Khz/ 24bit | 58.7% | 60,824,365 | 90秒 | 103,680KB |
モーツァルト ピアノ 協奏曲第15番 K.450 第2楽章 | 192Khz/ 24bit | 55.0% | 289,125,815 | 456秒 | 525,312KB |
モーツァルト 交響曲36番 リンツ第3楽章 | 192Khz/ 24bit | 57.1% | 145,908,580 | 222秒 | 255,744KB |
マーラー・交響曲 第2番 第3楽 | 192Khz/ 24bit | 48.4% | 343,855,979 | 617秒 | 710,784KB |
実状の圧縮率
以上のデータからFLACによる圧縮率は、平均55.7%、中央値57.1%という結果でした。
4461曲のファイルサイズを調べたサイトによりますと、平均54.6%、中央値56.8%との結果もあり、FLACへエンコードすることで約60%前後に圧縮されるのが実状のようです。
ピュアー音源の種類を変えたときの圧縮率(実験)
FLACアルゴリズム
FLACによる圧縮アルゴリズムは、公式サイトを見ても良く解りませんでした。 ネットをググってみるとどうも線形予測(LPC)誤差とチャンネル相関(差分)の2つの要素に関連がある様です。
素人なりに推察しますと、複雑な波形で更に左右チャンネル同士に相関のない音源は、圧縮率が悪化する様に想定できます。 チャンネル相関については、例えばステレオ2chで、相関が完全に一致している同相信号であれば、1ch分に相当し、50%程度に圧縮できるのではないか?ということではないかと想像しました。
そこで、圧縮率の高い方から低い方への順番を想定したピュアー音源を以下の組み合わせで実験してみることにしました。
ピュアー音源によるFLAC圧縮率実験結果
基準となるWAVEファイルサイズは、192khz 24bit 録音時間5秒ですので、ファイルサイズを計算しますと、5,760KBです。 この基準WAVEファイルサイズを分母として、FLACファイルの圧縮率は以下の通りです。
サウンド条件 | 波形 上段:Lch 下段:Rch | FLAC 圧縮率 | FLAC ファイルサイズ |
無音 | 12.2% | 701,253バイト | |
1khzノコギリ波: 左右ch同相 | 41.9% | 2,410,620バイト | |
1khzノコギリ波 右ch上下反転 | 47.9% | 2,760,476バイト | |
ピンクノイズ: 左右ch同相 | 48.8% | 2,812,286バイト | |
ピンクノイズ: 右ch上下反転 | 49.9% | 2,876,091バイト | |
ピンクノイズ: 右ch前後反転 | 89.0% | 5,125,113バイト |
ピュアー音源・実験結果の考察
FLAC圧縮率・ポイント
以上の結果は、実験前に想定したとおり、最も圧縮率が低い(悪い)信号の組み合わせは、片方のチャンネル(右)に左右のチャンネルに無相関である「前後反転」したピンクノイズの組合わせでした。
この実験が何の意味があるか?といことについては、無理筋ながら「レコード再生には、左右チャンネルのクロストークが本質的に存在するので、自ずからチャンネル相関が生じることになり、レコードのFLAC化は、圧縮率に有利に働くのでは無いか」と言えるかもしれません。
以上、FLACのファイルサイズと圧縮率について考察してみました。
圧縮率はビットレートに関係する
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参 照FLACとALACフォーマットのビットレート変動(振る舞い)を可視化
前回の記事で、不可逆圧縮のAACやMP3のビットレート変動を紹介しましたが、今回はFLAC(Free Lossless Audio Codec)とALAC(Apple Lossless Audio C ...