前回のブログでは、可逆圧縮のFLACフォーマットの評価を行いました。 今回はアップル推薦のALAC(Apple Lossless Audio Codec)についても前回と同様にピュア音源(ノコギリ波)を用いて評価し、更にFLACと比較して、どちらの方がパフォーマンスがあるか見てみたいと思います。
前回ブログ(FLACフォーマット)は以下を参照してください。
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ピュア音源でFLACフォーマットを評価してみました。(改訂)
LPレコードをハイレゾ録音する時に、無圧縮WAVEでなく可逆圧縮のFLACフォーマットで保存しています。 これは、音源を圧縮してファイルサイズを削減するためです。 VinylStudioの場合、FLA ...
改訂内容 ▼ 2018/12/30
目 次
ALACとは
Apple ロスレス[1](アップルロスレス、英語:Apple Lossless Audio Codec、略称:ALAC)はアップルの可逆圧縮方式のオーディオコーデック。iTunes等で使用されている。
非圧縮ファイル(WAVやAIFF)を音質の劣化なく70%から50%程圧縮する。通常はQuickTimeのMOVファイル(.mov)かMP4ファイル(.m4a)に格納される。
音声コーディック一覧(一般)
非圧縮 | 可逆圧縮 | 非可逆圧縮 | |
アップル系 | AIFF (Audio Interchange File Format) | ALAC (Apple Lossless Audio Codec) | |
Windows系 | WAV (Waveform Audio Format) | WMA Lossless (Windows Media Audio Lossless) | WMA |
他 | FLAC (Free Lossless Audio Codec) | AAC(Advanced Audio Coding) MP3 (MPEG-1 Audio Layer 3) |
「MP3、AAC」の音質について
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ピュアー音源から見た「MP3、AAC」の音質比較
前回ブログの正弦波の組合せで作ったエイリアシングノイズの無いノコギリ波(ピュアー音源)をVinylStudioでインポートした後、MP3、AACへ夫々出力したピュアー音源ファイルのスペクトル比較を行っ ...
ALACフォーマットの評価方法
- 以前ブログ記事で紹介した、WaveGenというソフトで、1khzのノコギリ波をハイレゾのWAVEフォーマット(192khz 24bit)で保存します。
- WaveGenの出力設定は、1khzノコギリ波、-3dbで5秒間 WAVEファイルに出力
- VinylStudioでWAVEをインポートした後、以下の様に圧縮率を設定しALACフォーマットにエンコードします。
- 夫々のファイルをAudacityに取り込み周波数分析し、音質劣化程度を観察します。
VinylStudioのALAC・圧縮率オプションの設定画面(圧縮率レベルは、0から4で5段階から選択できます。 defaultは2になります。)
夫々の音源ファイル諸元と波形
WAVE ファイル | ALAC-2 | ALAC-0 | FLAC-5 | FLAC-0 | |
圧縮Level | ーー | 2:default | 0:max file size | 5:default | 0:max file size |
サイズ | 5.49 MiB | 3.36 MiB | 4.71 MiB | 2.30 MiB | 4.59 MiB |
圧縮率 | 100% | 61.2% | 85.8% | 41.9% | 83.6% |
フォーマットレート | 192khz24bit | 192khz 24bit | 192khz 24bit | 192khz 24bit | 192khz 24bit |
OBR モード | CBR モード | VBR モード | VBR モード | VBR モード | VBR モード |
ポイント
以上は、Audacityに夫々のファイルを取込み、波形を確認したものです。 ALACは、可逆圧縮の通り、リンギング部分も含めてオリジナルのWAVE波形とほぼ同じに復元されていることが判ります。
ALACは、本当に可逆圧縮?
ALACファイル(ALAC-2)をデコードすると、元のWAVEに復元するかを調べるために、ALACファイルの波形を上下反転(逆相)して、その波形とWAVE波形とを加算したときゼロになれば両者の波形は同じと言えるので、Audacityを使って調べてみました。 その手順を以下に示します。(2019/1/9追記)
手順-1
WAVEファイルとALACファイルをAudacityに取込み、取り込んだALACに対して、エフェクトで上下反転(逆相)を行います。 青枠を参照してください。
手順-2
上のWAVEトラックと反転したALACトラックをMIXして新しいトラックを作成したのが下の画像です。 縦軸を最大感度(0.0005vつまり上の縦軸に対して-66db)にした状態で、Lch、Rchともフラット(無音)になっています。
ポイント
WAVEとALAC波形が完全に一致しているから、上のLch Rchのレベルがゼロ(無音)になったということです。 つまりALACが元のWAVEに復元できているので、可逆圧縮と言えます。
ALACファイルの周波数分析
WAVE、ALACファイルをAudacityに取込み、夫々を周波数分析しグラフ化しました。 更に、その差分(誤差)も併せてグラフ化しました。
スペクトル分析条件:関数hanning window、size16384
測定期間:1sec〜4secの3秒間 ALACの圧縮率レベルは”2”(ALAC-2)
ポイント
スペクトルの差分(劣化)が生じる箇所は、非常にレベルの低いノイズフロアレベル(-120db)で僅かながら誤差が生じています。 この誤差は、Audacityのスペクトル精度上に生じている可能性が高いように思われます。
今回の簡易的なテストで判ったこと
- オリジナルのWAVEとALACのノコギリ波の波形は、ほぼ一致しています。
- ALAC波形の上下反転した波形とWAVE波形をミックスすると、無音になることから、ALACは、WAVEに復元され、可逆圧縮と言えると思います。
- スペクトルの差分(劣化)について、この実験は、Audacityのスペクトル分析から間接的に誤差を求めていますので、このために僅かながら誤差が生じているものと思われます。
注意ポイント
結論
ALACファイルは、可逆圧縮であることが検証できたので、音質劣化は生じないと思われます。 また、ファイルの圧縮率は、デフォルト(ALAC-2)で、61.2%でした。 対してFLAC-5(デフォルト)で圧縮率が41.9%でしたから、パフォーマンスは、FLACの方が良いことが判りました。 今まで通り圧縮率レベルは”5”(FLAC-5)でLPレコードのハイレゾ化を進めて行こうと思います。
以上、ピュア音源でALACフォーマットを評価しました。
参考
(参考)VinylStudioでランブルフィルタをONにしてALACへエンコードした場合の波形比較
WAVEファイル:直線部分がストーレート(上段Lch 下段Rch)
ALAC-2ファイル:直線部分が湾曲
ALAC-0ファイル:直線部分が湾曲
注意ポイント
波形グラフ中の直線(赤線)は、ノコギリ波の直線性を見るためのものです。
ALACの場合も、ノコギリ波の直線部分が若干湾曲していますね。 ただし、FLACの湾曲部分と比較すると、ALACの方が若干湾曲が大きい様です。
(参考)夫々の音源ファイルの周波数分析
スペクトル分析条件:関数hanning window、size16384
測定期間:1sec〜4secの3秒間
ポイント
ポイント