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VinylStudioの低域ノイズ抑制フィルターを使用したLPレコードのハイレゾ化

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レコーディングソフトのVinylStudioには、ランブルフィルターや独自のローカットフィルターを入れることができます。 LPレコードのハイレゾ録音を行う上で、特にダイレクトドライブ(DD)プレーヤは低域ノイズに不利がありますので、低域フィルターを使用すべきか否かを検討してみました。 

これを思い立ったキッカケは、DENONのDL103Rカートリッジを使用し周波数分析してみたところ、低域共振と思われる11Hz付近でノイズが大きいことが気になったことに因ります。  少なくとも、我が家のB級DDプレーヤでは、何らかの低域ノイズを抑制するフィルターが必要と思われました。

 

 

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ランブルとは

ここで参考までに、レコードプレーヤのランブルの定義について山本武夫 著「レコードプレーヤ 」(日本放送出版協会)より引用してみますと

ランブルとは、モータから回転伝達機構を通してターンテーブル ピックアップと伝わる雑音的振動ならびに モータからターンテーブルボードを通してトーンアーム支点 ピックアップと伝わる雑音的振動を総称したものです。
回転むらが ターンテーブルの回転方向の振動であることに注目すると ランブルは ターンテーブルの回転方向に垂直な面内の振動を総称していることになります。
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山本武夫 著「レコードプレーヤ 」(日本放送出版協会)より引用

 

低域ノイズについて

1)低域ノイズの発生原因

低域ノイズの発生原因は、カートリッジのピックアップに伝わるフォノモータの振動、レコードのソリ(縦方向の振動)等があります。 特にDDプレーヤは、ターンテーブルの中に組み込まれたモータでターンテーブルを駆動するので、電磁振動がレコードを介してカートリッジの針先に伝わる可能性が大きくなります。 その点プーリ等でターンテーブルを回転させるベルトドライブ方式の方がノイズに対して有利です。 このブログで使用しているプレーヤは、DDプレーヤ(略40年前のTRIO製 KP-50F)を使用しています。

2)低域共振の問題

もう一つの要素として、低域共振の問題があります。 低域共振は、トーンアームとカートリッジで決まり、その共振周波数(f0)は、以下の式で決まります。 この式は、電気回路の共振周波数と同じですね。

  

mtは、実効質量で、カートリッジの重量からトーンアーム性能グラフから実効質量を求めます。 Cbは、カートリッジの針を支えるゴムダンパーのコンプライアンスです。

これは、カートリッジの自重が重いほど、ゴムダンパーが弱いほど、共振周波数が低くなることを示しています。 トーンアームやカートリッジで共振周波数が変わりますが、略10hz付近にある様です。

つまり、共振周波数に近い振動が共振して増大し、カートリッジ出力は、低域共振周波数付近のノイズが大きく出力されることになります。

 

DEON・DL103Rの低域ノイズの実際

ここで、我が家のB級DDプレーヤでレコードの無音溝をトレースした時の実際のカートリッジ出力信号を見てください。 低域の最大ピークは、スペクトルから、-39.1dbで、その周波数は、11hzでした。

低域ノイズの波形

スペクトル

低域ノイズ波形はLとRのノイズの位相が逆で、実際の再生においては打ち消し合って若干ノイズは低減されると思われます。

 

同様に、オルトフォンのMC20の低域ノイズを調べました。 低域の最大ピークは、12 Hzで -46.9 dBで、MC20の方が、ノイズレベルが、6db程低い結果でした。

これは、カートリッジに因る低域共振の差と思われます。 ちなみに、MC20の自重は、7gに対してDL103Rは、8.5gで、MC20の方が軽く、最低共振周波数も若干高くなって有利に働いているのかもしれません。

 

VinylStudioでハイレゾ録音した後、低域ノイズを簡単に抑制する方法として,VinylStudioのランブルフィルターを使用する方法独自のローカットフィルター(以下サブソニックフィルターと仮称)を作成して使用する方法がありますので、夫々を評価して行きたいと思います。

関連記事:テストレコード(AD-1)を利用してプレーヤの低域共振をチェックする

 

VinylStudioのランブルフィルターを使用する

❏ 「ランブルフィルター」を使用するには

  • 下の赤矢印ボタンをチェックすればランブルフィルターをONにすることができます。
  • 注意すべきは、ランブルフィルターをONにすると低域ノイズが下がるので、イニシャライズの補正ゲイン量が変わりますので必ずイニシャライズを実行することが必要です。

 

❏ 「ランブルフィルター」の周波数特性

VinylStudioのランブルフィルターの周波数特性を、簡易的にホワイトノイズを使用して、スペクトルを確認しますと、図のように、fcは40hzで18db/octと推定されました。

❏ 実際の音源スペクトル
展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」の冒頭部分で、ランブルONファイルとランブルOFFファイルでスペクトルを比較してみますと、下図の通り、劇的に11hz付近の低域ノイズが減少していることが判ります。

次に、「ランブルONファイル」と「低域ノイズの要素は少ない筈のe-onkyoからDLしたハイレゾファイル」で、展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」の冒頭のスペクトルを比較してみると下図のように、35hz付近で、約6db(2倍)以上「ランブルON」ではレベルが低下しており、低域が不足している様に思われます。

尚、音源は96khz 24bit Flacファイルで、以前のブログ「DENON MCカートリッジ DL103Rの音質比較」で使用したファイルです。

❏ 「ランブルフィルター」を使用した試聴結果
試聴環境としては、もちろん我が家のB級ステレオで行いました。 その手順と結果は、

  • ランブルフィルターをONにしてイニシャライズした後、必要とする音源フォーマットにしてHAP-Z1ESに出力します。
  • 我が家のB級オーディオのサブウーファを使用しました。

 

展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」でランブルONでは、e-onkyoからDLしたハイレゾファイルと試聴・比較して、やはり、ランブルONファイルでは低域不足を感じてしまいました。 よって、残念ながらVinylStudioのランブルフィルターの使用は憚られる結果でした。

 

VinylStudioで独自のサブソニックフィルターを作成して使用する

❏ 独自のサブソニックフィルターを作成して使用するには
下図のイコライゼーションカーブを描画して、赤矢印をONすれば、思い通りの減衰特性をもつサブソニックフィルターを使用することができます。 下図の場合、カットオフ周波数を25hz程度にイメージし名前を「subsonic 25hz -120db」にしました。

サブソニックフィルターをONにすると低域ノイズが下がるので、イニシャライズの補正ゲイン量が変わりますので必ずイニシャライズを実行することが必要です。

❏ 実際の音源スペクトル
展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」の冒頭部分で、サブソニックONファイルとサブソニックOFFファイルでスペクトルを比較してみますと、下図の通り、30hz付近までは、両者のレベルは同等で、11hz付近では劇的に低域ノイズが減少していることが判ります。

次に、「サブソニックONファイル」と「e-onkyoからDLしたハイレゾファイル」で、展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」の冒頭のスペクトルを比較してみると下図のように、サブソニックONで35hz付近で、略同等のレベルになっており低域不足は解消しているように思われます。

また、30hz〜200hzの相関を調べますと、下図の様にe-onkyoからDLしたハイレゾ音源とサブソニックON音源は、略完全な相関がありました。

❏ 「サブソニックィルター」を使用した試聴結果

展覧会の絵・「バーバ・ヤーガの小屋」で、ランブルONで感じていた低域不足は解消し、低域については、e-onkyoからDLしたハイレゾファイルにほぼ匹敵する様になったと思われました。

低域ノイズ抑制については、独自で作成した「サブソニックフィルター」を使用するのがベターであると思いました。

 

マ ト メ

低域ノイズの抑制のためにサブソニックフィルターを使用することは、邪道ではないかと思われるかも知れませんが、いくら高額なターンテーブルを使用してもカートリッジとアームに起因する低域共振は避けられず、またレコードのそりによる低域ノイズは防ぐことができないのが実情では無いでしょうか?

そのためにも、サブソニックフィルターを使用するのがベターで、さらに当サイトで使用している我が家のB級DDプレーヤに至っては、低域ノイズによって引き起こされると思われる混変調の方が有害で、独自で作成したサブソニックフィルターをONしてハイレゾ化することが最善であると思いました。

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翻って、デジタルのサンプリングレートやビット深度に弱点のあるCD等のデジタル再生と比較して、LPレコード再生は、低域ノイズ(共振)もあり、トレーシング歪やトラッキング歪もあり、本質的にLPレコード再生の方が不利な点が多々あるのが実情です。 しかし、LPレコード再生の方が、CDよりも音質的に好ましく感じるのは、低域ノイズを除けば、この本質的な歪が自然な倍音成分なので?好ましい音質と感じる要因かもしれません。

 

低域ノイズ抑制フィルターのサウンド比較

サンプル楽曲は、1966年録音・カラヤン指揮BPOの「ラベル編曲・ムソルグスキー展覧会の絵」LPレコードの中から「バーバ・ヤーガの小屋」グラモフォンレーベルです。

MP3(320kbps)ですが、夫々の低域ノイズ抑制フィルターの効果をお聴比べください。

❏ フィルターを通さない元のサウンド

 

❏ ランブルフィルターONのサウンド

 

❏ 独自のサブソニックフィルターONのサウンド

 

以上、VinylStudioの低域ノイズ抑制フィルターを使用したLPレコードのハイレゾ化でした。

 

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