macOSに付属するApple Musicアプリ(以下、iTunesと統一します)では、音質設定でVBRのチェックを外した際のビットレートモード(種別)が明示されていません。 このため、VBRのチェックを外すと単純にCBRモードになると判断してしまうかもしれません。 AAC変換の場合、以下の判別手順の結果から、VBRのチェックを外すと実はABRモードになることが分かりました。
また、MP3変換の場合、どうなるか? 音質設定でVBRのチェック「アリ」「ナシ」の場合のビットレートパターンからビットレート種別の判別を追記しました。(2024/10/20)→ ここをクリックして参照
なお、使用したMusicアプリ(iTunes)のバージョンは 1.4.1.29 です。
備考:XLDアプリのAACエンコーダはiTunesと同じmacOSのコアオーディオ(afconvert?)を利用していると思われビットレート種別でビットレートパターンも同じ傾向になることが想定されます。
ビットレート種別の判別・手順
ビットレートの種別が事前に分かっている音声ファイルを使用して、まず「フレーム単位でグラフ化」します。このグラフを基準となるパターンとして保存します。 次に、判定したい音声ファイルも同様に「フレーム単位でグラフ化」し、基準パターンと照らし合わせて比較します。 この比較により、対象の音声ファイルがどのビットレート種別に属しているかを判別します。 具体的には、
- 基準パターンとなるビットレート変動をグラフ化
ビットレート種別(CBR、VBR、ABR)を確実に設定できるXLDアプリで音声ファイルを変換し「フレーム単位でグラフ化」し、このグラフパターンをリファレンス(基準)にします。 - iTunesのビットレート変動をグラフ化し基準パターンと照合
iTunesのVBRチェックを「アリ」「ナシ」で変換したファイルを同じ様にグラフパターン化し基準パターンと照合してビットレート種別を判定します。
ビットレート変動をパターン化(可視化)する方法
- フレーム単位でグラフ化:詳細にビットレート変動をグラフ化する
- 秒単位でグラフ化:平均的なビットレート変動をグラフ化する
変換する音声ファイルについて
1959年録音のカラヤンとベルリン・フィルが演奏した「ドヴォルザークのスラヴ舞曲第1番ハ長調 Op.46-1」CD音源(=リッピングしたFlac 16bit 44.1khzファイル)です。
ここから、前述のビットレート種別の判別・手順に従ってiTunes AAC変換ファイルのビットレート種別を特定して行きます。
XLDアプリを使って基準パターンとなるビットレート変動をグラフ化
XLDアプリは、CBR、VBR、AVRのビットレート・モード(種別)を設定できます。 夫々の設定でAACファイルに変換しリファレンス(基準)となるビットレート変動を「フレーム単位でグラフ化」を行います。
Point
1 ビットレート・モード(種別)の設定
macOS用のXLDアプリは、AAC変換を行う時にXLDの環境設定から出力フォーマット【MPEG-4 AAC】のオプションからビットレート・モードのCBR、VBR、AVRを選択できます。
環境設定
オプション
リファレンスで使用するビットレート・モード(種別)の設定は以下の3種類でAAC変換を行います。
- CBR→CBR-320k:目標ビットレート320kbps
- VBR→VBR-q127:VBR 目標品質127
- AVR→VBR-320k:目標ビットレート320kbps
Point
2 XLDのビットレート種別毎のビットレートパターン
上のビットレート種別設定(3種類)でAAC変換したファイルを「フレーム単位でグラフ化」しました。[ 横軸:時間(sec) 縦軸:ビットレート(kbps)] このパターンがビットレート種別のリファレンス(基準)になります。
iTunesのVBRチェック「アリ」と「ナシ」について
詳しい「iTunesで音源をAAC または MP3に変換する手順」は、ここをクリックして参照してください。
Music Appの 環境設定 > 読込設定 「読み込み方法」の中のAACエンコーダを選んだ後、カスタム設定をクリックすると音質設定画面が表示されます。 ちなみに、デフォルト設定ボタンをクリックすると、可変ビットレート(VBR)にチェックが入りますので、多分AppleとしてはVBRを推奨しているのかも知れません。
可変ビットレート(VBR)のチェック「アリ」「ナシ」で変換されたAACファイルのビットレートの変動がどうなるか?を「フレーム単位でグラフ化」しXLDのビットレートパターンと照合します。
iTunesのAACファイルのビットレート種別を特定する(XLDのAACビットレートパターンとの照合)
iTunesのVBRチェックが「アリ」を照合
iTunesのVBRチェックが「ナシ」を照合
AAC変換の音質設定でVBRチェック「アリ」と「ナシ」の結論
VBRチェック「アリ」 | VBRチェック「ナシ」 | |
ビットレート種別 | VBRモード | ABRモード |
- VBRチェック「ナシ」は、CBRでなく、ABRモードで変換される。
- 音質重視なら、一般的にVBRモードの方がABRより優位になると言われているので、AAC変換は、VBRチェックを「アリ」にすべきと思われる。
- iTunesのAAC変換はVBRモードとABRモードのみで、音質設定でCBRモードは設定できない。
以上は、AACの場合でした。 ここから、MP3の場合のビットレート種別を調べてみました。 2024/10/20追記
MP3変換の音質設定でVBRのチェック「アリ」「ナシ」の場合
MP3変換の場合、ビットレートパターンはシンプルなので、AACの場合で行ったビットレートパターンによる照合は実施せずMediaInfoの情報と合わせてビットレート種別の判定を行いました。
Point
1 VBRチェック「アリ」のビットレートパターン
VBRチェック「アリ」で、ビットレートを160kbps,256kbps,320kbpsに設定すると、下の様なビットレートパターンとなります。 特徴的には、以下の通り
- ビットレートの最大値は320kbpsにり、設定されたビットレートが最小値になる。 例えば160kbpsの場合は、max320k〜160kbpsの間で変動する。
- 320kbpsで設定すると、ビットレートは、変動無く320kbps一定になる。 MediaInfoで確認すると、ビットレート種別はCBRになる。
Point
2 VBRチェック「ナシ」の場合
設定したビットレートでMP3変換されたファイルを「フレーム単位でグラフ化」すると、ビットレートが一定で一本の直線となり、CBRモードであることが特定できました。 また、MediaInfoで確認してみても、ビットレート種別はCBRでした。
Point
3 MP3変換のビットレート種別・結論
VBRチェック「アリ」 | VBRチェック「ナシ」 | |
ビットレート種別 | VBRモード (320kbps設定ではCBRになる) |
CBRモード |
iTunesのAAC及びMP3の音質設定(マトメ)
AAC変換の場合
- VBRチェック「ナシ」
全てXLD相当のABRモードになることが分かりました。 (CBRにはなりません) - VBRチェック「アリ」
全てVBRモードになります。
MP3変換の場合
- VBRチェック「ナシ」
全てCBRモードになります。
- VBRチェック「アリ」
殆どはVBRモードになりますが、320kbpsに限りCBRモードになります。
以上、iTunesのAAC及びMP3の音質設定にある、VBRチェックの有無について調べた結果でした。
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